【Jリーグクラブのボランティアに関する調査】永年の多岐にわたる活動が、国内のスポーツイベントボランティアの成熟に寄与。一方でボランティア参加者の固定化などの課題も。

公益財団法人 笹川スポーツ財団のプレスリリース

Jリーグ全クラブのボランティア活動を包括的に把握。ホームゲームの運営でボランティアに依頼している活動で最も多いのは、「終了後清掃(椅子まわりの掃除やゴミ拾い)」で88.0%。

「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する公益財団法人笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利)は、Jリーグ(J1~J3)全55クラブ(2019年11月時点)を対象に、『Jリーグクラブのボランティアに関する調査』を実施し、全てのクラブから回答を得ました。その結果、ホームゲームの運営だけでなく、それ以外での多岐にわたるボランティア活動の実態が明らかとなり、Jリーグクラブにおけるボランティアのさまざまな役割と成果がわかりました。

一方で、調査結果からいくつかの課題も浮き彫りとなりました。Jリーグクラブのボランティアの今後の継続的な発展のために求められる取り組みについても提案しています 。

—————————————————–

■調査結果のポイント

1. ホームゲームの運営でボランティアに依頼している活動(上位3つ) ※詳細:図表1

  • 「終了後清掃(椅子まわりの掃除やゴミ拾い)」 88.0%
  • 「配布作業(無料のマッチデープログラム含む)」 85.5%
  • 「インフォメーション・場内案内」 78.4%

2. ホームゲームの運営以外でボランティアに依頼している活動(上位3つ) ※詳細:図表2

  • 「ファン感謝デー」 49.1%
  • 「クラブ主催・共催の地域イベント」 40.0%
  • 「駅周辺での会報・チラシの配布」 34.5%

3.ホームゲーム運営等におけるボランティア活動の課題(上位3つ) ※詳細:図表3

  • 「活動参加者が一部の登録者に限られている」 85.4%
  • 「登録者の役割の固定化」 80.0%
  • 「登録者の高齢化」 78.2%

■研究担当者コメント
Jリーグのホームゲーム運営のボランティアは、1990年代後半から一部のクラブで活動が始まり、その後すべてのクラブに広まった。主な役割は来場者へのおもてなし(ホスピタリティ)であるが、クラブのため、来場者のために自発的(ボランタリー)に取り組む積極性が評価され、活動の幅を徐々に広げ、クラブに不可欠な存在に成長してきた。

近年は、長年にわたり活躍している中心メンバーの固定化という課題を抱えるクラブもある。今後も活動を発展させるため、ラグビーワールドカップ2019や東京オリンピック・パラリンピックなどの大規模イベントで活躍したボランティアから、新たな人材を発掘し育成する試みが求められる。

こうした人たちに、身近な地域で定期的な活動の場を提供することが必要であり、全国各地にクラブがあり試合数も多いJリーグは、ボランティア希望者の最適な受け皿といえる。

【笹川スポーツ財団スポーツ政策研究所 シニア政策アナリスト 渋谷茂樹】

※なお、詳細は公式ウェブサイトでもご覧いただけます。
https://www.ssf.or.jp/thinktank/volunteer/Jleague_v_2020.html

—————————————————–

■主な調査結果

1.ホームゲームの運営でボランティアに依頼している活動
ホームゲームの運営で、クラブがボランティアに依頼している活動として25種類をリストアップし、ボランティアへの依頼状況および業務委託先の有給スタッフへの依頼状況をあわせてたずねた。

■ボランティアに依頼している活動
割合が最も多かったのは、「終了後清掃(椅子まわりの掃除やゴミ拾い)」の88.0%で、以下、「配布作業(無料のマッチデープログラム含む)」(85.5%)、「インフォメーション・場内案内」(78.4%)、「車いす席利用者のアテンド・サポート」(75.5%)、「ゲートでのチケットチェック」(70.4%)などの順となっている。図表1に示す活動以外にも多岐にわたる活動を行っているが、特に、観客サービスにおいて、ボランティアが必要不可欠な役割を果たしていることが確認できる。

■業務委託先の有給スタッフに依頼している活動
割合が最も多かったのは、「駐車場の整理」の100%で、以下「当日設営(看板設置、人工芝敷設、テント設営、その他)」(90.6%)、「前日設営(看板設置、人工芝敷設、テント設営、その他)」(83.7%)、「グッズ販売」と「待機列整理」(それぞれ82.7%)などが続く。

図表1:ボランティアに依頼している活動(上位15項目/全25項目)
※回答数は、「ボランティア」「業務委託先の有給スタッフ」のどちらか、もしくは両方に依頼していると回答したクラブ数。


—————————————————–

2.ホームゲームの運営以外でボランティアに依頼している活動
クラブに対し、ホームゲームの運営以外でボランティアに依頼している活動についてたずねた。最も多いのは「ファン感謝デー」の49.1%で、全体のほぼ半数のクラブで、ボランティアの協力を得ていた。また、「クラブ主催・共催の地域イベント」(40.0%)、「駅周辺での会報・チラシの配布」(34.5%)、「ポスター貼り」(30.9%)などでも、3割以上のクラブがボランティアに活動を依頼しており、ホームゲーム以外のファンサービスやクラブのプロモーションに関する活動においても、ボランティアが重要な役割を果たしていることがわかる。

図表2:ホームゲームの運営以外の活動(複数回答)

—————————————————–

3. ホームゲーム運営等におけるボランティア活動の課題
ボランティアの活動上の課題についてたずねた。「活動参加者が一部の登録者に限られている」が85.4%で最も多く、以下「登録者の役割の固定化」(80.0%)、「登録者の高齢化」(78.2%)、「新規の登録者が少ない」(72.7%)、「平日の活動参加者が少ない」(70.9%)などの順となっている。

図表3:ホームゲーム運営等におけるボランティア活動の課題

—————————————————–

■『Jリーグクラブのボランティアに関する調査』概要

【調査の目的】
Jリーグクラブにおけるボランティア活動の現状を把握することで、クラブとボランティアとのよりよい協力のあり方や、ホームゲーム等でのボランティア活動の更なる充実のための基礎資料を得ることを目的とする。

【調査対象】2019年シーズンのJリーグクラブ(J1~J3):全55クラブ

【調査方法】インターネットによるアンケート調査

【調査期間】2019年11月~2020年1月

【調査内容】
(1)ホームゲーム運営におけるボランティア協力の有無
(2)ボランティア団体の概要
 ・団体名、ホームゲームの運営協力開始年、団体とクラブとの関係
 ・2018年シーズン終了時のボランティア登録人数・年齢構成
 ・2018年シーズンのホームゲーム平均参加人数
(3)ホームゲームの運営でボランティアに依頼している活動
(4)ホームゲームの運営以外でボランティアに依頼している活動
(5)ボランティアへのインセンティブ
(6)ボランティア活動のための保険加入状況
(7)ホームゲームのボランティア活動に向けたクラブとボランティア団体の役割分担
(8)クラブとボランティア団体のミーティング実施状況
(9)ボランティアの募集方法
(10)クラブが認識するボランティア活動の成果と課題

【回収結果】100%

【調査の実施体制】
本調査は、下記の3団体の協力のもと、笹川スポーツ財団が実施した。
(1)公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
(2)スポーツボランティア・ラウンドテーブル実行委員会
(3)特定非営利活動法人日本スポーツボランティアネットワーク
<調査の実務担当者>
 澁谷 茂樹(笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 シニア政策アナリスト)
 藤岡 成美(笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策オフィサー)

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。