ラグビーワールドカップ2019は、“ボランティアマネジメントで最も成功した”大会

公益財団法人 笹川スポーツ財団のプレスリリース

「ラグビーワールドカップ2019大会ボランティアに関する調査」および「ラグビーワールドカップ2019日本大会公式ボランティアプログラム『NO-SIDE』活動レポート」で明らかになった大会のレガシー

「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する公益財団法人笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利 以下:SSF)は、ラグビーワールドカップ2019(以下、大会)の大会ボランティア約13,000人を対象に、「ラグビーワールドカップ2019大会ボランティアに関する調査」を、2019年9月3日~9月18日、2019年11月21日~12月14日の大会の前後2回にわたり実施いたしました。その結果、ボランティア参加者のラグビーやスポーツボランティアに対する考えが、ラグビーワールドカップ2019を経てポジティブな方向に変化したことがわかりました。

 本リリースでは、この調査の具体的な結果とともに、特定非営利活動法人日本スポーツボランティアネットワーク(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利 以下:JSVN)の「ラグビーワールドカップ2019日本大会公式ボランティアプログラム『NO-SIDE』活動レポート」より成功の要因を紹介しております。ぜひご一読ください。

■【主な調査結果】

1・ボランティア活動への満足度 (図表1)
「非常に満足した」(55.0%)、「やや満足した」(34.5%)で、全体の9割が満足した結果に

2.ラグビーに対する気持ちの変化:ラグビー日本代表への愛着、大幅に高まる (図表2)
「勝っても負けても、日本代表を応援し続ける」大会前 59.1%→後 70.7%
「今後ラグビー日本代表を応援する意思がある」大会前 52.9%→後 70.3%
「私はラグビー日本代表試合を直接観戦したい」大会前 54.2%→後 67.9%

3.ボランティア活動への意欲の高まり:スポーツボランティア活動の継続希望者は9割超 (図表3・4)
今後もスポーツボランティアを 、
 ・「ぜひ行いたい」大会前 49.3%→後 55.4%
 ・「できれば行いたい」 大会前 44.5%→後 39.1%

【ボランティア活動レポート 紹介】

1.綿密なトレーニングプログラム
大会本番に活動意欲が最高潮となるように、プログラムを定期的に実施し、ボランティアのモチベーション維持・向上を促した。

2.12種類のボランティア活動と、活動後の感想(一部)
12から成るボランティア活動すべてから、ボランティアのやりがいのあるコメントが溢れた。

3.有償スタッフとボランティアの連携(信頼関係の構築)
有償スタッフの、ボランティアに対する「不安」は、大会を通じて「信頼」に変化した。

4.ボランティア運営のポイント 
今後行われるスポーツイベント主催者のための、「ボランティアマネジメント成功のポイント」

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【研究担当者コメント】

調査結果と大会ボランティアに関わるストーリーをまとめたレポートから、ラグビーワールドカップが、国際スポーツ大会のボランティアの成功例であることがわかる。様々な成功要因があげられるが、長野オリンピック・パラリンピック(1998)や2002FIFAワールドカップなどの大規模大会、Jリーグクラブのホームゲーム、東京マラソンに代表される大規模市民マラソンなどを重ねて、わが国のスポーツイベントのボランティアが成熟してきたという歴史を忘れてはならない。

 大会で活躍したボランティア一人ひとりはもとより、大会におけるボランティア運営のノウハウやその背景にある精神を今後のスポーツ推進につなげることが、ラグビーワールドカップのレガシーといえる。来年夏の東京オリンピック・パラリンピックには、このレガシーを活かし、スポーツボランティアをさらに発展させることを期待したい。

【笹川スポーツ財団スポーツ政策研究所 シニア政策アナリスト 渋谷茂樹】
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※なお、SSF ウェブサイト、JSVNウェブサイトでご覧いただけます。
http://www.ssf.or.jp/report/category6/tabid/1972/Default.aspx(SSF)
https://spovol.net/investiga(JSVN)

【主な調査結果】

1.ボランティア活動への満足度

 ボランティア活動全体の満足度を5段階でたずねた。「非常に満足した」が55.0%、「やや満足した」が34.5%であり、両者を合わせると「満足した」が9割を占めた。一方、「あまり満足しなかった」と「全く満足しなかった」を合わせた「満足しなかった」は6.3%であり、回答したほとんどのボランティアが活動に満足していることがわかる(図表1)。

図表1 ラグビーワールドカップ2019のボランティア活動満足度
ラグビーワールドカップ2019のボランティア活動全体を振り返って、あなたの満足度を教えてください。(1つ選択)

2.ラグビーに対する気持ちの変化

 大会前に実施した「活動前調査」と大会後の「活動後調査」で、ラグビーに対する意識と態度について、「非常にあてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「全くあてはまらない」の5段階評価で調査し、活動前後の変化をみた。

 活動前調査において、「非常にあてはまる」が最も多いのは、「勝っても負けても、日本代表を応援し続ける」の59.1%で、以下、「私はラグビー日本代表試合を直接観戦したい」(54.2%)、「今後ラグビー日本代表を応援する意思がある」(52.9%)が続く。活動後調査で、「非常にあてはまる」が最も多いのは、「勝っても負けても、日本代表を応援し続ける」の70.7%で、以下、「今後ラグビー日本代表を応援する意思がある」(70.3%)、「私はラグビー日本代表試合を直接観戦したい」(67.9%)が続く。(図表2)

 また、「非常にあてはまる」の割合が大きく伸びた項目は、「今後ラグビー日本代表を応援する意思がある」(17.4ポイント:52.9%→70.3%)、「今後ラグビー日本代表に関わるボランティアをしたい」(17.2ポイント:24.1%→41.3%)、「私はラグビー日本代表試合をテレビ、インターネット等で観戦したい」(15.6ポイント:48.2%→63.8%)などであった。

図表2 ラグビーに対する意識と態度【ボランティア活動前後での変化】

3.ボランティア活動への意欲の高まり

 今後のスポーツボランティア活動の実施希望について、大会前に実施した「活動前調査」と大会後の「活動後調査」でたずね、活動前後の変化をみた。
 
 活動前調査では、「ぜひ行いたい」(49.3%)と「できれば行いたい」(44.5%)を合わせた「行いたい」が93.8%であった。活動後調査では、「ぜひ行いたい」(55.4%)と「できれば行いたい」(39.1%)の合計が94.5%で、「行いたい」の活動前後の差は0.7ポイントでほとんど増えていないが、「ぜひ行いたい」の割合は6.1ポイント増加しており、ラグビーワールドカップのボランティア活動を通じて、スポーツに関わるボランティアの意欲が向上したことがうかがえる(図表3・図表4)。

図表3 スポーツボランティア活動の実施希望【活動前調査】
今後、あなたはスポーツにかかわるボランティア活動を行いたいと思いますか。(1つ選択)

図表4 スポーツボランティア活動の実施希望【活動後調査】
今後、あなたはスポーツにかかわるボランティア活動を行いたいと思いますか。(1つ選択)

【ラグビーワールドカップ2019日本大会公式ボランティアプログラム『NO-SIDE』活動レポート紹介】

1.綿密なトレーニングプログラム
 プログラムの実施時期については、ボランティアのモチベーション向上を念頭に置いて設定した。
 導入のインタビューロードショーでは、RWCを体感できるブースなどを設置してボランティアの心をつかみ、活動意欲を引き出すことを意識した。大会本番に活動意欲が最高潮となるように、プログラムを定期的に実施し、ボランティアのモチベーション維持・向上を促した。

2.12種類のボランティア活動と、活動後の感想(一部)

3.有償スタッフとボランティアの連携(信頼関係の構築)
 円滑に大会運営を行うためには、統括する有償スタッフと、ボランティアの連携が重要な鍵を握った。有償スタッフもまた、ボランティアとの活動を通じて、心境に変化があった。

▼人間関係を構築するまでは、『説明会は来てくれたが、本番にドタキャンされないか』などの不安があった。しかし開催後1週間もすると、『一緒に運営する仲間なのだ』と思えるようになった。

▼運営側とボランティアとの『顔の見える関係』はとても大事で、いいことも悪いことも、いろいろなことを相談されるが、丁寧に耳を傾け、一つでも解決案を提案することで、ボランティアはとても協力的になってくれた。

▼有償スタッフもボランティアも大会に向けて焦りがあった。焦りは開催直前にピークとなったが、テストマッチでほぼ解消された。大会中盤にはさまざまなスキルや経験をもったボランティアが現場で重宝されるようになり、『運営にはボランティアが欠かせない』という認識が有償スタッフ・ボランティア全員で共有できた。

4.ボランティア運営のポイント
 RWC2019ボランティア活動においても、改善点が多く発生した。今後ボランティア運営を行うスポーツイベント主催者に向けて、参考となる主なポイントは以下のとおり。

(1)ボランティア向けコールセンターの充実
ボランティアからの問い合わせを受け付けるコールセンターは、ボランティアと運営組織との接点。チャットボットなど、電話以外の問い合わせ方法を確保することが望ましい。

(2)自治体との連携
自治体との連携には、(1)根拠となる文書を定める(2)詰めきれない部分が発生することを相互で理解(3)首長クラスを交えての意見交換を行う(4)円滑なコミュニケーションで信頼関係を構築が必須。

(3)事業者(有償スタッフ)との連携
ボランティアの活動内容を実際の現場で指示するのは受注事業者となる可能性が高い。主催者は事業者選定の際、ボランティア運営の協力を含めた契約を結ぶように促すことが重要。

(4)個人情報の管理
ボランティアからは「個人情報」の取り扱いに関する問い合わせが非常に多い。個人情報の取り扱いについては主催者と受注事業者とその委託先も含めて、一括管理することが望ましい。

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「ラグビーワールドカップ2019大会ボランティアに関する調査」概要
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【調査目的】
ラグビーワールドカップ2019で活動した大会ボランティアの参加動機やボランティア活動の満足度、今後のボランティア参加意向などを明らかにすることで、大会のボランティアマネジメントを検証し、ボランティアを大規模
国際大会のレガシーに位置づける方策を検討するための基礎資料とする。

【調査方法】インターネット調査

【調査対象】ラグビーワールドカップ2019の大会ボランティア約13,000人

【調査回数】2回

【調査期間】
活動前調査:2019年9月3日~9月18日 / 活動後調査:2019年11月21日~12月14日
ボランティア活動前後の意識の変化を把握するため、活動前と活動後に調査を実施。

【回収結果】活動前調査:4,823人/活動後調査:4,974人

【調査実施体制】
2017年3月締結の「ラグビーワールドカップ2019大会に向けたスポーツボランティア普及・養成に関する協定書」に基づき、以下の3団体が協力して実施。
1) 公益財団法人ラグビーワールドカップ2019組織委員会
2) 公益財団法人笹川スポーツ財団
3) 特定非営利活動法人日本スポーツボランティアネットワーク

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「ラグビーワールドカップ2019日本大会 
公式ボランティアプログラム『NO-SIDE』活動レポート」概要

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ラグビーワールドカップ2019のボランティアについて、今後日本で開催されるスポーツイベントの参考にするため、ボランティアのコンセプト作りから募集、トレーニング(研修)、活動本番、大会後の振り返りまで、大会のボランティアに関するすべての情報をまとめたレポート。
大会ボランティアの育成に協力した(特非)日本スポーツボランティアネットワークが、大会組織委員会・笹川スポーツ財団の協力を得て制作した。

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