株式会社ルネサンスのプレスリリース

NSGグループの新潟医療福祉大学健康スポーツ学科の下門洋文准教授と、株式会社ルネサンス スイミングコーチの星川慎吾氏(本学大学院修了)らによる競泳リレースタートに関する共同研究が、スポーツ科学分野で世界的に権威のある『Journal of Sports Sciences』に採択されました。この研究では、8週間の専門トレーニングプログラムにより、リレーの引き継ぎ時間を平均0.31秒から世界トップレベルの0.05秒へと大幅に短縮することに成功しました。星川氏が新潟医療福祉大学大学院で水泳部のサポートスタッフとして行った研究を昇華させ、トップ選手から指導現場まで応用可能な「スタート改善メソッド」の科学的根拠を実証しました。本研究成果は、国際誌Journal of Sports Sciences (IF=3.1) に2026年9月19日付で公開されました。
研究について
【研究概要】
競泳リレー種目において、前泳者がタッチしてから次泳者が飛び立つまでの「引き継ぎ時間(Changeover Time: COT)」を極限まで短縮することは、勝敗を分ける決定的な要素です。近年、世界の一流選手の間では、スターティングブロックの後方に立って構え、向かってくる前泳者のタッチタイミングに合わせて前方に大きく一歩を踏み出して飛び出す「ロングステップ(Long-step: LS, 図1)」という技術が注目されています。
本研究は、新潟医療福祉大学大学院の修士課程に在籍していた星川氏(現・株式会社ルネサンス)が中心となり、大学男子競泳選手10名を対象に、8週間にわたる陸上トレーニングと水中の技術ドリルを組み合わせた独自のLS指導プログラムを実施しました。トレーニング開始前は平均「0.31秒」だった引き継ぎ時間が、8週間のプログラム後には平均「0.05秒」へと劇的に短縮しました。これは国際大会の決勝レベルに匹敵するスピードです。スタート動作の3次元キネマティクス(動作分析)に加え、筋力測定(等速性下肢筋力)や飛び込み時の恐怖心(心理スケール)の変化を多角的に評価し、LS技術習得のメカニズムを世界で初めて包括的に明らかにしました。

【研究成果のポイント】
引き継ぎ時間(Changeover Time: COT)が世界トップレベルの「0.05秒」へ
LSを普段行っていない熟練スイマーを対象に、トレーニング開始前は平均「0.31秒」だった引き継ぎ時間が、8週間のプログラム後には平均「0.05秒」へと劇的に短縮しました。これは国際大会の決勝レベルに匹敵するスピードです。
5m通過タイムが約0.2秒短縮
引き継ぎ時間を極限まで縮めつつも、飛び出しスピード(離台水平速度)を落とすことなく、5m通過タイムを平均1.17秒から0.94秒へと大幅に短縮させました(※グライド技術を用いた条件下)。
「無駄のないフラットな飛び出し」と「後ろ脚の引き込み力」を解明
動作分析の結果、飛び出す瞬間の身体の重心軌道がより低く、水平に近くなっていることが分かりました。また、筋力測定により、大きく一歩を踏み出す際に「後ろ脚の太もも裏の筋肉(ハムストリングス)」を素早く屈曲させる筋力が向上したことが、この鋭い飛び出しを支えていることを突き止めました。
飛び込みに対する「恐怖心」の克服
専門プログラムによる段階的な技術習得により、選手が飛び込む際の心理的な恐怖心が有意に減少したことも、アグレッシブなスタートを可能にした要因であることが確認されました。

【今後の展望】
本研究で実証された「安全かつ段階的なスタート習得プログラム」の知見は、今後、競技スポーツの強化と社会課題の解決という両輪において広く還元・展開されます。
1. 新潟医療福祉大学から、世界へ羽ばたくオリンピアンの輩出
研究成果は、まず新潟医療福祉大学水泳部の日常のトレーニングに深く組み込まれます。バイオメカニクスに基づいた最先端のスタート・引き継ぎ技術を定着させることで、国内トップレベルスイマーの競技力をさらに引き上げ、本学からのオリンピアン輩出を強力に目指します。
2. 「学校プールの老朽化」と「泳げない子供の増加」という社会問題への貢献
現在、多くの教育現場において、学校プールの老朽化にともなう改修費の高騰、水泳指導や安全管理に伴う教員の重労働化、そしてこれらに起因する「泳げない子供の増加(水泳指導機会の減少)」が深刻な社会問題となっています。これに伴い、学校の水泳授業を地域の民間スイミングスクールへ委託する動きが全国で加速しています。本研究が実証した「選手が抱く恐怖心を科学的にコントロールし、陸上から水中へ段階的にステップを踏む指導法」は、安全管理が最も難しいとされる「飛び込み指導」における極めて重要な安全指針(エビデンス)となります。
新潟医療福祉大学ではこの研究にとどまらず、現場に還元できる水泳に関連した科学的根拠(エビデンス)をつくり続け、株式会社ルネサンスをはじめとする民間スイミングスクールと学校教育のシームレスな連携を支援し、すべての子供たちが安全に、かつ効果的に泳ぎを学べる「持続可能な水泳授業」の実現に向けて貢献していきます。
研究の詳細は、<こちら>
【原論文情報】
雑誌名: Journal of Sports Sciences
論文タイトル: 「Effects of an 8-Week Long-Step Start Training Programme Intervention on Relay Performance in Collegiate Male Swimmers: A Single-Arm Study」
著者: Hirofumi Shimojo, Shingo Hoshikawa, Shoichiro Yamashiro, Rio Nara, Yoshimitsu Shimoyama
利益相反・資金援助:本研究に関して開示すべき利益相反はありません。
公開日: 2026年9月19日

