株式会社NSGホールディングスのプレスリリース
NSGグループの新潟医療福祉大学理学療法学科の横田裕丈講師は、2026年7月4日から8月31日までの約2か月間、プロゴルファー・畑岡奈紗選手に理学療法士として帯同し、女子ゴルフの世界最高峰であるLPGAツアーでコンディショニングサポートを行いました。
今回の帯同は、米国の理学療法クリニック「FuncPhysio」およびゴルフ特化型コンディショニング施設「PRIISM Golf Lab TOKYO」代表であり、本学大学院臨床徒手理学療法コースの非常勤講師も務める髙田洋平先生との、教育・臨床両面における連携を背景に実現したものです。
横田講師と髙田先生は、米国の理学療法士向け卒後教育機関「Institute of Physical Art(IPA)」において共通の教育体系のもとで研鑽を積んできた関係にあり、これまでの協働を通じて築かれた信頼を基盤として、年間を通じた畑岡選手のサポート体制の一員として帯同が実現しました。
横田講師は、畑岡選手とともに各大会開催地を巡り、身体機能の評価をはじめ、練習・試合前後のコンディショニング、疲労や疼痛への対応、リカバリー、傷害予防など、競技パフォーマンスを支える幅広いサポートを行いました。
約2か月間にわたり世界最高峰の舞台で選手を支えた横田講師。実際の現場ではどのようなサポートを行い、何を感じたのでしょうか。今回の帯同を通じて見えてきた理学療法士の専門性や可能性、そして今後の教育・研究への展望について、横田講師に話を聞きました。
横田裕丈講師 インタビュー内容
Q1.―世界最高峰の舞台で感じた、トップアスリートを支えるということー
今回、LPGAツアーに帯同し、世界最高峰の舞台で戦うプロゴルファーを継続的にサポートするという、非常に貴重な経験をさせていただきました。
実際に帯同して強く感じたのは、トップアスリートのサポートでは、単に痛みを改善したり、身体を整えたりするだけでは十分ではないということです。身体機能に加えて、選手の表情や声色、睡眠、移動や試合のスケジュール、気温や湿度など、さまざまな情報からその日の疲労やコンディションを捉える必要があります。
LPGAツアーでは、毎週のように国や地域を移動しながら試合が続きます。時差や長距離移動、暑熱環境、身体的・精神的な疲労など、パフォーマンスに影響する要因は多岐にわたります。そのため、「どこを治療するか」だけでなく、「どうすればより良く回復できるか」「翌日のパフォーマンスにつなげるために何が必要か」を考え続けることが重要でした。
選手との日々の会話や身体の変化から状態を読み取り、これまで学んできた知識や技術を総動員して最適な方法を考えることに、理学療法士として大きな面白さとやりがいを感じました。
Q2.―実際には、どのようなコンディショニングを行ったのでしょうか?―
今回の帯同では、関節可動性、筋機能、姿勢、身体各部の連動性などを評価し、その結果をもとに徒手療法、エクササイズ、ウォームアップ、トレーニングなどを組み合わせてサポートを行いました。
また、身体への介入だけでなく、表情や声色、睡眠、日々のスケジュールなどから疲労度を把握し、睡眠の質を高める工夫、暑さへの対策、アイスバスを含めたリカバリー方法なども、その日の状態に応じて考えました。
一見すると同じ動作の問題に見えても、その背景には股関節や体幹、胸郭などの身体機能だけでなく、疲労や睡眠、暑熱環境、視覚情報、自律神経を含めた神経系の状態、集中力など、さまざまな要因が関係します。それらを総合的に捉え、その時の選手に何が必要なのかを判断することが重要です。
私自身がこれまで研究してきた自律神経機能や神経筋機能、疲労、リカバリーに関する知識も、今回のサポートにおいて大きな力になりました。研究で得た知識を、実際のトップアスリートのコンディショニングに応用できたことは、非常に大きな経験でした。
Q3.―トップアスリートを支えるうえで、理学療法士にはどのような専門性が求められますか?―
スポーツの現場では、さまざまな専門職が選手を支えています。その中で私は、理学療法士こそ、こうしたアスリートサポートの重要な役割を担っていく必要があると考えています。
理学療法士は、解剖学、生理学、運動学を体系的に学び、人の身体機能や動作を専門的に評価し、その背景にある要因を考えながら治療や運動を選択する職種です。
同じ診断名や似た症状であっても、その背景にある身体機能や動作、疲労状態、生活環境などは一人ひとり異なります。目の前の選手を評価し、得られた情報から仮説を立て、介入し、その反応を再評価する。このクリニカルリーズニングのプロセスこそ、理学療法士が持つ大きな専門性の一つだと考えています。
海外のツアー現場では、身体やコンディショニングを専門とする多くの専門職が活躍しています。一方、日本人理学療法士がこうした世界のトップスポーツの現場で活動する機会は、まだ決して多くありません。今回の経験を通じて、より多くの理学療法士や、これから理学療法士を目指す学生にも、ぜひこうした世界に挑戦してほしいと感じました。
Q4.―今回の経験を、今後どのように活かしていきたいですか?―
今回の経験を一度限りのものにするのではなく、今後もオファーや選手・チームのニーズに応じて活動を継続していきたいと考えています。
長期間にわたるツアーを継続的にサポートしていくためには、複数の理学療法士が選手の身体の特徴や評価結果、治療方針、コンディショニングの考え方を共有し、一貫したサポートを提供できる体制が重要だと感じています。この点については、本学大学院の臨床徒手理学療法コース非常勤講師であり、PRIISM Golf株式会社代表の髙田洋平先生とも、今後どのような形でサポート体制を構築していけるか話し合っています。それぞれの理学療法士が共通認識を持ちながら、継続性のあるサポートを提供できる形を目指していきたいと考えています。
また、今回の経験を大学での教育や研究にも還元していきたいと思っています。臨床やスポーツの現場では、診断名や症状だけから介入方法を決めることはできません。目の前の人を詳細に評価し、身体機能や動作、その人を取り巻くさまざまな要因を統合して考えるクリニカルリーズニングが不可欠です。
本学大学院の臨床徒手理学療法コースでも、このクリニカルリーズニングを重視しています。今後は、今回の経験やこれまで取り組んできた自律神経機能、神経筋機能、疲労、リカバリーに関する研究を、教育や臨床、スポーツ現場へさらに還元していきたいと考えています。
Q5.―最後に、理学療法士を目指す学生へメッセージをお願いします―
今回の帯同を通じて改めて感じたのは、理学療法士の可能性は、病院やクリニックの中だけにとどまらないということです。傷害予防、コンディショニング、パフォーマンス向上、疲労管理、リカバリーなど、理学療法士の知識や技術を活かせる分野は数多くあります。
そして、競技現場では「身体を見る」だけではなく、「人を見る」ことも重要です。表情や声、日々の会話、生活や移動のスケジュールなどにも目を向けながら、その選手が今どのような状態にあるのかを考え、必要なサポートを選択する力が求められます。
学生の皆さんには、大学で解剖学、生理学、運動学などの基礎をしっかり学び、その知識を実際の人や動作に結び付ける力を身につけてほしいと思います。
また、世界のスポーツ現場で活動するためには、専門的な知識や技術に加えて、英語でのコミュニケーション能力も不可欠です。他国の選手やコーチ、サポートスタッフと情報を共有し、自分の考えを伝える機会も多くあります。将来、世界を舞台に活動したいと考えている学生には、ぜひ学生のうちから英語の準備にも取り組んでほしいと思います。
世界最高峰のスポーツの舞台も、理学療法士が専門性を発揮できるフィールドの一つです。今回の経験が、その可能性をより多くの学生や理学療法士に知ってもらい、次に挑戦する人が増えるきっかけになればと思っています。
【新潟医療福祉大学】 https://www.nuhw.ac.jp/
全国でも数少ない、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部16学科の医療系総合大学です。この医療系総合大学というメリットを最大限に活かし、本学では、医療の現場で必要とされている「チーム医療」を実践的に学ぶことができます。また、全学を挙げた組織的な資格取得支援体制と就職支援体制を構築し、全国トップクラスの国家試験合格率や高い就職実績を実現しています。さらに、スポーツ系学科を有する本学ならではの環境を活かし、「スポーツ」×「医療」「リハビリ」「栄養」など、スポーツと融合した学びを展開しています。
<NSGグループについて> https://www.nsg.gr.jp/
NSGグループは、教育事業と医療・福祉・介護事業を中核に、健康・スポーツや建設・不動産、食・農、商社、広告代理店、ICT、ホテル、アパレル、美容、人材サービス、エンタテイメント等の幅広い事業を展開する101法人で構成された企業グループです。それぞれの地域を「世界一豊かで幸せなまち」にすることを目指して、「人」「安心」「仕事」「魅力」をキーワードに、地域を活性化する事業の創造に民間の立場から取り組んでいます。