ジュニア競泳選手のケガは性別と成長段階で異なる!4年間の追跡調査で「女子の高いケガ再発率」と「成長時期ごとの痛めやすい部位」を解明

株式会社NSGホールディングスのプレスリリース

NSGグループの新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科の三瀬貴生准教授らの研究グループは、幼少期から競泳に専門的に取り組む成長期競泳選手90名を2021年1月から2025年3月まで前向きに追跡し、練習中に生じた外傷・障害の特徴を明らかにしました。

追跡期間中に111件の外傷・障害が記録され、1000 athlete-hours(AH)あたりの発生率は全体0.868、男子0.643、女子1.042で、女子は男子の1.62倍でした。また、練習や試合を休まないnon-time loss(NTL)の外傷・障害は、1日を超える離脱を伴うtime loss(TL)の3.11倍で、女子の再発発生率は男子の3.67倍でした。さらに、成長スパートの指標である推定身長発育最大速度年齢(APHV)の前後で外傷・障害の好発部位が異なり、APHV前では足関節、APHV後では腰部の外傷・障害が多いことが示されました。本研究は、ジュニア競泳選手のケガ予防では、暦年齢だけでなく性別と身体的成熟度を考慮する必要があることを示しています。

研究成果は2026年5月14日に国際誌「Exercise, Sport, and Movement」にオンライン公開されました。

研究について

【研究成果のポイント】

1. 競泳関連の外傷・障害既往がない早期専門化ジュニア競泳選手を、最長約4年間にわたり前向きに追跡した点。

2. 女子の外傷・障害発生率は男子の1.62倍、女子の再発発生率は男子の3.67倍であり、性別による特徴を明らかにした点。

3. 成長スパート前は足関節、成長スパート後は腰部に外傷・障害が多く、身体的成熟度に応じた予防の必要性を示した点。

【研究概要】

競泳では同じ動作を繰り返すため、肩、腰部、膝、足関節などにオーバーユースによる外傷・障害が生じます。特に競泳選手は8歳前後から一つの競技に専門化する傾向があり、成長期には練習量や強度が増加します。一方、これまでの競泳に関する外傷・障害研究は成人や大学生を対象としたものが多く、幼少期から競泳に専門化した選手を、外傷・障害既往のない時点から長期間追跡した研究はありませんでした。そこで本研究では、早期専門化した成長期競泳選手を対象として、外傷・障害の発生率、部位、重症度、再発、発症時の暦年齢と身体的成熟度を前向きに調査しました。

対象は一つのスイミングクラブに所属し、競泳関連の外傷・障害既往がなく、週5回以上・1回90分以上の練習を行い、年間6回以上大会に出場し、競泳のみを実施していた90名(男子39名、女子51名)です。調査期間は2021年1月から2025年3月で、平均追跡期間は31.33か月でした。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーと医療資格を有するスタッフが、発症日、部位、種類、発症様式、再発の有無を記録し、月ごとの練習時間から発生率を算出しました。1日を超えて練習または競技を休んだ場合をTime-loss injury(TL)、離脱を伴わない身体的訴えをNon time-loss injury(NTL)としました。また、身長・体重等から最大身長発育年齢(Age of peak height velocity; APHV)を推定し、発症時が成長スパート前か後かを分類しました。 

 

【主な結果】

総練習曝露時間127,929.75 AHに対して111件の外傷・障害が記録されました。全体の発生率は1000 AHあたり0.868で、男子0.643、女子1.042でした。女子対男子の発生率比は1.62(95%信頼区間1.09-2.41)で、女子の発生率が有意に高い結果でした。重症度別ではTLが27件、NTLが84件で、NTL対TLの発生率比は3.11(95%信頼区間2.02-4.80)でした。多くの選手が身体的な問題を抱えながら練習を継続していたことが示唆されます。

部位別では肩が44件と最も多く、次いで足関節34件、腰部19件、膝14件でした。女子では肩の発生率が最も高かった一方、男子では部位間に明確な差が認められませんでした。再発は男子7件、女子33件で、女子対男子の再発発生率比は3.67(95%信頼区間1.62-8.29)でした。女子の外傷・障害発生率の高さには、再発の多さが関与している可能性があります。

外傷・障害発症時の暦年齢は男女とも12-13歳で差がありませんでしたが、APHVを基準とした身体的成熟度には差があり、男子は平均0.88年前、女子は平均0.90年後に発症していました。また、APHV前に生じた外傷・障害の52.6%は足関節であり、APHV後では腰部の割合が22.2%に増加しました。成長スパートの前後で身体に生じる負荷や脆弱な部位が変化する可能性が考えられます。

【研究成果の意義と今後の展開】

本研究から、ジュニア競泳選手の外傷・障害予防では、男女を一律に扱うのではなく、性別と身体的成熟度に応じて重点を変える必要性が示されました。女子では段階的な競技復帰と再発予防、成長スパート前では足関節、成長スパート後では腰部の痛みの有無を確認することが重要と考えられます。一方、本研究は単一クラブを対象とした比較的小規模な観察研究であり、詳細な練習負荷や画像診断情報を収集していないため、因果関係を直接示すものではありません。今後は対象者を増やし、練習量・強度や身体機能、画像所見を組み合わせた検証が必要です。

 

【研究の詳細】

Injury Surveillance in Early Specialized Adolescent Competitive Swimmers: A 4-Year Prospective Study

Takao Mise*, Miwako Suzuki-Yamanaka, and Yuiko Matsuura

(*は筆頭著者)

Exercise, Sport, and Movement. 2026;4(3):e00066.

Published online: 14 May 2026

DOI: https://doi.org/10.1249/ESM.0000000000000066

【研究者情報】

新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科

准教授 三瀬 貴生(みせ たかお)

 

【研究に関する問い合わせ先】

新潟県新潟市北区島見町1398番地

E-mail: mise@nuhw.ac.jp

【新潟医療福祉大学】 https://www.nuhw.ac.jp/

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