産学連携の共同研究による金融工学を応用したサッカー選手価値評価モデルを開発

ヤンマーホールディングス株式会社のプレスリリース

東京理科大学、株式会社セレッソ大阪およびヤンマーホールディングス株式会社は金融工学を応用したサッカー選手の契約価値評価モデルを共同で開発しました。

 

本研究は、金融工学におけるリアルオプション理論を応用し、サッカー特有の制度である「移籍期間(Transfer Window)」および「契約解除条項(Release Clause)」を考慮した新たな選手価値評価モデルに関するものです。また2026年6月1日に、本研究に関する研究論文が国際学術誌 「Journal of Quantitative Analysis in Sports (JQAS)」に掲載されました。

研究の背景

近年、サッカー選手の移籍市場は世界的に拡大しており、移籍金や契約条件の適正な評価はクラブ経営における重要課題となっています。一方で、従来の選手評価は市場価値や過去実績に基づくものが中心であり、契約期間中の意思決定の柔軟性や将来の不確実性を十分に反映できていませんでした。

本研究では、金融市場におけるオプション価格理論を応用することで、以下の4つの項目を統合的に評価する数理モデルを構築しました。

 

・選手の将来的な成長可能性

・移籍機会の価値

・契約解除条項の影響

・クラブによる放出判断

研究結果

本研究により、サッカー選手の契約価値は固定的な金額ではなく、将来の選択肢や制度設計によって大きく変化することが示されました。特に、移籍期間の存在、契約解除条項の設定、選手のパフォーマンス変動、怪我リスクなどが、契約価値に与える影響を定量的に評価できることが明らかになりました。本研究は、スポーツファイナンス分野において金融工学の理論を実務的課題へ応用した研究として位置付けられます。

 契約解除条項の有無による選手価値の変化

・市場価値は一定期間ごとに評価される指標ですが、本研究のモデルによる選手価値は試合ごとのパフォーマンスを反映して変動します。そのため、同じ選手価値であっても、選手の活躍状況に応じて価値が上下する様子を捉えることができます。

・また、契約期間が短くなるにつれて、クラブが将来得られる便益や移籍機会が減少するため、選手価値は徐々に低下していきます。契約終了時には、移籍金を伴わずに退団できる可能性が高まることから、価値は市場価値に近づいてい

ます。

・さらに、契約解除条項が設定されている場合には、将来の移籍に関する選択肢が制限されるため、選手価値は移籍金水準に引き寄せられます。一方で、契約解除条項が設定されていない場合には、クラブが将来の移籍交渉を通じて追加的な価値を得られる可能性があるため、より高い価値として評価されます。

契約解除条項の有無による各試合における選手価値の変化

 

産学連携による取り組み

本研究は、東京理科大学総合研究院スポーツサイエンス研究部門・後藤允部門長の金融工学・データサイエンス研究と、セレッソ大阪およびヤンマーが有するスポーツ現場の知見を融合した産学連携プロジェクトです。

共同研究における各者の役割

・東京理科大学では、創域情報学部および総合研究院スポーツサイエンス研究部門を中心として、スポーツ分野におけるデータ活用や意思決定支援に関する研究を推進しています。

・セレッソ大阪では、フットボールインテリジェンス室を中心に、データ分析や先端技術を活用した競技力向上およびクラブ経営の高度化に取り組んでいます。

・ヤンマーは、スポーツを通じた地域社会への貢献とともに、大学・企業・スポーツクラブによる共創を推進しています。また、今回の研究においては実務活用に向けた評価・検証、スポーツビジネス領域における産学連携の枠組み構築を目指しています。

研究代表者からのコメント

本研究は、金融工学の理論をスポーツ分野へ応用し、サッカー選手の契約価値を定量的に評価する新たな試みです。移籍期間や契約解除条項といったサッカー特有の制度を数理モデルに組み込むことで、選手価値をより動的に捉えることを目指しました。今回の成果は、東京理科大学における数理モデル・データサイエンス研究と、セレッソ大阪およびヤンマーが有するスポーツ現場の知見が結びついたことにより実現したものです。今後も産学連携を通じて、スポーツファイナンスにおける意思決定支援や新たな価値創造に貢献してまいります。

                         東京理科大学 創域情報学部 情報理工学科 准教授

                        総合研究院 スポーツサイエンス研究部門 部門長

                                                        後藤 允

今後の展望

本研究成果をベースとし、クラブ価値の評価やスポーツアナリティクス、AI・データサイエンスのスポーツ応用など、引き続きスポーツデータ活用に関するテーマの共同研究を推進していきます。

今後も、大学の研究力、企業の技術力、スポーツクラブの現場知見を融合することで、日本スポーツ界の発展と新たな価値創造に貢献していきます。

論文情報

掲載誌:

Journal of Quantitative Analysis in Sports

 

論文タイトル:

An Option Pricing Framework for Valuation of Football Players: Transfer Windows and Release Clauses

 

DOI:

https://doi.org/10.1515/jqas-2026-0043

<注記>記載内容は発表時点のものです。最新の情報とは内容が異なっている場合がありますのでご了承願います。

ヤンマーホールディングス株式会社

1912年に大阪で創業したヤンマーは、1933年に世界で初めてディーゼルエンジンの小型実用化に成功した産業機械メーカーです。大地・海・都市のフィールドで、エンジンなどのパワートレインを軸に、アグリ・建機・マリン・エネルギーシステムなどの事業をグローバルに展開し、顧客価値を創造するソリューションを提供しています。創業以来受け継ぐ、人と未来の可能性を信じ挑戦を後押しする「HANASAKA」の精神を原動力に、「A SUSTAINABLE FUTURE —テクノロジーで、新しい豊かさへ。—」の実現を目指します。

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