企業とスポーツの持続可能な関係とは。LGBTQ+当事者の参加・ダイバーシティ促進でスポーツビジネスを活性化「work with Pride 2025 カンファレンス」でトークセッションを実施

〜スポーツをテーマにEY Japan、福島ユナイテッドFC、丸井と登壇~

特定非営利活動法人プライドハウス東京のプレスリリース

インクルーシブ社会の啓発・実現を目指すNPO法人プライドハウス東京は、2025年11月14日(金)に経団連会館にて開催された、日本国内の企業・団体の人事・人権・ダイバーシティ担当者が集結し性的マイノリティ(以下:LGBTQ+)が自分らしく働ける職場づくりを推進する「work with Pride 2025 カンファレンス」にて、企業とスポーツの持続可能性をテーマにトークセッションを実施しました。

DEI*が広がる中、スポーツ分野の環境整備も重要になっています。近年ではオリンピックに出場するLGBTQ+アスリートが年々増加しパリ大会では約200名が参加した一方で、日本人選手は0名に留まるなど取り組みが遅れている状況です。国内人口の約8%とされるLGBTQ+がスポーツ分野に積極的に参画することで、ファンが多様化しクラブと企業・地域との関係性向上や競技人口の増加も期待されています。

*DEI:「Diversity(ダイバーシティ/多様性)」「Equity(エクイティ/公平性)」「Inclusion(インクルージョン/包括性)」の頭文字をとった言葉。企業経営や社会において、多様な人材がお互いを尊重し合い、誰もが能力を最大限に発揮できるような公平な環境を目指す考え方

▪️スポーツ発展に向けた「スポーツ版PRIDE指標(仮称)」の概要と構想

このような状況のなか、スポーツ分野のインクルーシブとクラブ・リーグ・企業の持続可能な発展に向け、スポーツ業界の新たなDEI指標として「スポーツ版PRIDE指標(仮称)」の開発が2024年11月に発表されました。本指標は、スポーツクラブ・リーグ・協会と、その活動を支えるスポンサー企業との新しい連携スタイルを提案するもの。双方が組織全体を通じて横断的に連携することでDEIが可視化され、協賛先のリスク管理や、行政と連携した新規事業開発にも資する指標になることが見込まれます。また、日本人口の約8%を占めるといわれるLGBTQ+のスポーツ分野への積極的な参加を促すことで、競技人口の増加だけでなく、ファンやスポンサーの多様化および増加、クラブと企業・地域との関係強化といったさまざまなメリットが期待できます。

昨年の発表後に実行委員会も設立され、発起人のプライドハウス東京と一般社団法人work with Pride、初期メンバーのEY Japan株式会社(日本オリンピック委員会とスポーツ庁の事業支援およびプロスポーツ団体にコンサルティングサービスを提供)・公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)、その後、Jリーグクラブである福島ユナイテッドFCを運営するスポーツX株式会社が追加参加しています。

▪️トークセッション「スポーツ版PRIDE指標(仮)~開発から見えた企業とスポーツのサステナブルな関係~」詳細

当日のトークセッションでは、当団体でスポーツ事業アドバイザーを務める野口亜弥が登壇、約1年間にわたる活動の進捗報告を行いました。また、スポーツ版PRIDE指標の開発から見えた企業とスポーツのサステナブルな関係や今後について、下記のゲスト陣とともに発表しました。

登壇者

⚫︎多田 雅之 氏(EY Japan  EY新日本有限責任監査法人 第2事業部 パートナー)

⚫︎中田 彩仁 氏(福島ユナイテッドFC オペレーションオフィサー / スポーツX株式会社 経営企画部)

⚫︎井上 道博 氏(株式会社丸井 / TSUNAGU+合同会社)

⚫︎野口 亜弥(Azitama 代表 / 成城大学 スポーツとジェンダー平等 国際研究センター副センター長 / プライドハウス東京・スポーツ事業アドバイザー)

(以下、トークセッション詳細)

社会への影響が危惧される、日本スポーツ業界のDEI対策の遅れ

プライドハウス東京が2025年4月にスポーツ団体を対象に調査を実施したところ、DEIが進んでいないスポーツ業界の実態が浮き彫りとなりました。「LGBTQ+およびSOGIEに関する差別禁止方針がありますか」という問いに「ない」と答えた組織が63%、相談窓口の設置有無に関しても73%が「ない」と回答。また「PRIDE指標の存在を知っている」については90%が「知らない」と答え、スポーツ業界のDEIへの取り組みが非常に遅れていることが改めてわかりました。

「米トランプ政権の反LGBTQ+ムーブメントにより、特にトランスジェンダー女性に対する競技現場からの排除が正当化される傾向があり、多くの研究者が懸念しているように、こうした差別的な考えが、やがて社会に蔓延してしまうのではないかと危惧しています。しかし「LGBTQ+に関する取り組みを進めたほうがいいと思うか」という設問には、「そう思う/大いにそう思う」とポジティブな回答を示す組織が66%あり、希望を感じました。私たちが差別をなくすための指標を策定し、各団体に提示しながら伴走して、スポーツの現場からLGBTQ+支援の取り組みを進めていくことの重要性を痛感しました」(野口)

こうした調査結果をもとに、実行委員会は「スポーツ版PRIDE指標(仮称)」のドラフトを策定。3名のパネラーからは、スポーツチームのパフォーマンス力向上・さまざまなステークホルダーとの関係強化・社会へもたらす好循環など、本指標に倣うことによるさまざまなメリットが提示されました。

「選手・サポーター・スポンサー企業らが一体となって啓発に取り組む“協同体”に」(中田氏)

スポーツのクラブチームとして初めて企業版の「PRIDE指標」ゴールドを獲得した福島ユナイテッドFCの中田氏は、トランスジェンダー当事者としてDEIに取り組む理由について語りました。

「学生時代からサッカーと陸上に熱中してきた自分にとって、スポーツは自分らしくいられる大切な場です。しかし、競技空間が性別で明確に区切られていたり、LGBTQ+に対する差別的な言動が発生しやすい現場であることも自覚していました。大好きなスポーツが抱える大きなギャップを解消したいとの思いから、「PRIDE指標」を獲得するために人事規定の見直しを含むさまざまな認証プロセスをひとつひとつクリアしていきました」

「今年、人権啓発マッチを開催し企業からもご一緒したいとの声をいただきました。サッカークラブというのは、選手・スタッフ・サポーター・スポンサー企業・行政・アカデミーなど、年齢もバックグラウンドも多種多様なステークホルダーに支えられて運営が成り立っています。だからこそ、地域に根差したハブ役にならなければなりません。

とくに企業との連携は重要。何千人・何万人という観客が集まる試合というハレの場で、子どもたちの憧れである選手とともに、価値観を共有する企業のみなさんと一緒に啓発メッセージを発信し続けられるような土台がスポーツ界に整えば、社会にとっても非常にポジティブなインパクトを与えられると期待しています。

ただ、先ほどの実態を考えると、いきなり企業版と同レベルの指標を目指すのはややハードルが高いかもしれません。スポーツ業界の現状に合った指標を設けて、関心を持ってくださる団体に提示していくのはすごくいい方法だと思います。着手するには勇気がいるかもしれませんが、一歩踏み出したその先には、思いもよらない素敵な出会いと未来が待っています。ぜひご一緒できる企業とともに歩んでいきたいです」

「ガバナンスの向上は、スポンサー企業との信頼関係構築に絶大な効果を発揮」(多田氏)

実行委員会の一翼を担ってきたEYの多田氏は、設立から1年間にわたる活動を振り返りました。

「スポーツの世界はある意味、性善説やボランティア精神に支えられて発展してきた側面があります。それゆえにガバナンスも属人的で仕組みを十分に整えることなく成長してきてしまったという面もあります。指標がなければ、課題を可視化できませんし、属人性が高いゆえに起こる問題も多い。スポーツ界がスポンサー企業からもファンからも信頼され、ますます発展を遂げるためには、指標を活用して組織のガバナンスを強化することの意義は大きいでしょう。

「スポーツ界とビジネス界は、お互いが手を取り合えばものすごいパワーを発揮します。特にスポーツには、難しいことでもひと目で理解させる力があります。例えば、ビジネス界は多様性の推進を取り組んでいますが、ラグビーの日本代表チーム構成は多様性そのものです。また、Jリーグは、ビジネスの力がスポーツの発展に大きく貢献してきた実績そのものです。DEI、ビジネス、スポーツがお互いに良い影響を与え合って好循環をもたらす世界がこの先にあると思うと、その土台作りに関われていることをうれしく思います。これからも頑張っていきたいですね」

「DEIに取り組むスポーツチームや企業こそが勝って、社会を動かすエンジンになる」(井上氏)

2015年から2020年まで丸井でDEIとビジネスを繋ぐ取り組みに注力し、LGBTQ+と事業を結びつけてきた井上氏。店舗設計や商品開発だけでなく、丸井の中核サービスのひとつでもあるクレジットカード事業などで両者間の距離を近づける工夫を重ね、社内外にダイバーシティを定着させてきました。

「ひと昔前なら、宣伝的効果を重視してスポーツ団体へ協賛する企業が多かったと思います。しかし今は、ビジョンやパーパスが共有できるチームに協賛するスタイルが増えています。助ける側・助けられる側ではなく、お互いにエンパワーメントし合えるような関係性をいかにして築いていくかが重要なんです。」

さらに、ハラスメントなどの問題が露呈しDEIに取り組まないスポーツチームに対し、企業サイドがスポンサーから撤退するといった直近の事例を題材に、スポーツチームに協賛する際に「PRIDE指標」の有無を参考にするのもよいと話しました。

「日本企業は100点満点を目指そうとしますが、DEI分野における100%の正解はありません。ある程度のリスクを想定し、どこまで許容できるかを探っていくべきなんです。画一的な仕事をAIがやってくれるようになれば、違った価値観・生き方・考え方といったダイバーシティをビジネスにどう生かすかが、企業の競争力の源になってきます。しかし、世の中の人々にその大切さを認知させて仲間を増やすためには、DEIを取り入れたチームが勝って強くなること、企業であれば儲かること、それが社会を変える大きな原動力になると思います。DEIをコストとしてではなく投資と考え、一緒に歩んでいける企業を増やしたいですね。FC福島がもっと強くなれば『DEIを取り入れたサッカークラブは勝てる』という成功事例として受け入れられ、業界全体が盛り上がるはず。中田さんたちにはぜひJ1を狙っていただきたいですね。」

大手リーグ・クラブ・団体らと『スポーツ版PRIDE指標(仮称)』を早々に実装し、業界全体への普及を目指す(野口)

「『スポーツ版PRIDE指標(仮称)』ドラフトを、とある大きなプロリーグに提案したところ、担当者から『(この指標には)絶対に取り組まなければならないと理解したが、現場のままではひとつもクリアできないので、これから伴走してほしい」と言っていただき、手応えを感じています。しかし、この取り組みを、属人的範囲を超えて組織内にどうグロースさせていくかも課題です。組織化するツールのひとつとして本指標を活用していただきたい。影響力のあるリーグ・クラブ・団体とまずは実装にこぎつけ、ほかの団体への普及を目指します」

「プライドハウス東京」では、今後もスポーツ界におけるダイバーシティ定着とインクルーシブ社会の啓発・実現に向けて活動していきます。

▪️「プライドハウス東京」がスポーツ事業に注力する背景

差別や偏見が根強く存在し続けるスポーツ界において、LGBTQ+に関する事実や実態に基づいた情報と、当事者らに安心・安全な居場所を提供することを目的とし、2010年バンクーバー冬季オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に誕生した「プライドハウス」。以降、国際的なスポーツ大会が開催されるたび、世界各地のNGOなどが主体となって、さまざまなスタイルの「プライドハウス」が設立・運営されてきました。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催に合わせ、LGBTQ+に関する情報発信を行うホスピタリティ施設としてスタートし、多様性に関するさまざまなコンテンツ発信に取り組んできた「プライドハウス東京」にとって、日本のスポーツ分野におけるDEIの実現は原点ともいえる大きな目標のひとつです。

▪️「work with Pride 2025 カンファレンス」について

日本国内の企業・団体のLGBTQ+等の性的マイノリティ(以下:LGBTQ+)に関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する一般社団法人work with Pride(以下:wwP)が主催する、年に一度のカンファレンス。LGBTQ+当事者が自分らしく働ける職場づくりを進めるための取り組みレベルを評価する『PRIDE指標』を制定しています。10回目の実施となった今回、全国の企業・団体の人事・人権・ダイバーシティ担当者らが参加し、922社が認定を受けました。

<開催概要>

日時/2025年11月14日(金)13:00〜17:00

会場/経団連会館 国際会議場・オンライン(ハイブリッド形式)

主催/work with Pride 2025 実行委員会・一般社団法人work with Pride

後援/厚生労働省・経済産業省・東京都・一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)・日本労働組合総連合会(連合)・公益社団法人 経済同友会

▪️「特定非営利法人プライドハウス東京」について

団体・個人・企業・公的機関などとともに、セクターを超えたLGBTQ+当事者支援およびソーシャル関連活動を実施。「教育・多様性発信」「文化・歴史・アーカイブ」「ウェルネス・サポート」「アスリート発信」「祝祭・スポーツイベント・ボランティア」「居場所づくり」「仕組みづくり」「レガシー運営チーム」という個別テーマを掲げた8チームにわかれ、協働プログラムを企画・制作・運営しています。

公式HP:https://pridehouse.jp/

▪️『スポーツ版PRIDE指標(仮称)』に関するお問い合わせ

一般社団法人work with Pride スポーツ版PRIDE指標開発実行委員会 事務局

(担当:野口 亜弥 aya.noguchi@azitama.jp)

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