松戸市のプレスリリース
松戸市は、松戸市立松戸高校が第41回全国高等学校弓道選抜大会・団体戦(2022年)で千葉県勢初の全国優勝を果たし、松戸市立栗ケ沢中学校・第六中学校が全国大会などで優勝・好成績を収めるなど、千葉県内有数の弓道文化が育まれ続けている街です。
このような松戸市の弓道文化を支えているのが松戸市弓道連盟の方々で、直近では、後継者育成に尽力してきた本村昌克範士八段が最高位称号「範士」となりました。
そんな中、注目すべき存在が“松戸の弓道”をけん引する錬士(弓道の指導ができる実力を持ち、精錬の功顕著な者)、教士(錬士よりさらに指導力・知識・品格などが求められる)、範士(最高の称号で、弓道の模範となる人格・見識・技術を備えた者)と弓道人生を歩み始めた若手をつなぐキーパーソン、貝谷佑一錬士六段です。
◆指導者であり、“松戸の弓道”の中心戦力
松戸市弓道連盟会員の貝谷錬士六段は、全日本男子弓道選手権大会(2025年9月 @全日本弓道連盟中央道場)で準優勝を果たし、第79回 国民スポーツ大会(2025年9〜10月 @滋賀県彦根市)で千葉県成年男子団体近的優勝、男女総合4位に貢献しました。
母校などでは指導者として、そして自身も“松戸の弓道”の戦力として鍛錬に励む貝谷錬士六段に、「なぜ松戸は弓道が盛んなのか」「弓道に興味がある人へ」「“松戸の弓道”からみえる可能性」「自身の目標と“松戸の弓道”の未来」などを伺いました。

◆4年前に弓道を再開し、成果で魅せる
松戸市立栗ケ沢中学校で弓道を始め、専修大学松戸高等学校、東邦大学と、学生時代の10年間を弓道に捧げてきた貝谷錬士六段。
弓道を始めたきっかけは、「体を動かすのは好きだが運動の才能はないと感じていた中、弓道はスタートラインが皆一緒で、がんばれば上を目指せると感じた」こと。また、中学の部活紹介時に、弓が的に刺さり体育館に鳴り響いた轟音に圧倒され、弓道の道へ進みました。
その後高校進学の際は、栗ケ沢中学校の弓道部を教えていた奥田繁樹教士六段が専修大学松戸高等学校でも指導されていたことが、同校入学の大きなきっかけとなりました。貝谷錬士六段は、高校時代に三段に合格するなど、指導者に恵まれた環境で弓道の基礎を固めてきました。
その後、社会人となり約4年間弓から離れた時期もありましたが、その情熱は冷めませんでした。再開を決めた際、すぐに具体的な目標を定め、次のように振り返ります。
貝谷錬士六段:「4年前に弓道を再開する際、『千葉県代表として国民スポーツ大会の選手になること』を目標に稽古を重ねてきました。中学生以来、全国レベルの大会から遠ざかっていましたが、この度の国民スポーツ大会の選手への選抜、そして全日本選手権で準優勝という結果に繋がりました。これまでの経験と稽古が実を結び、大変嬉しく思っています」
ブランクを経てなお、実績を更新するこの快挙は、貝谷錬士六段がどれほど目標達成への熱意を持ち、努力を積み重ねる求道者であるかを物語っています。また、大学時代に薬学部で学んだ体の構造などの知識も、弓道技術の向上に活かされたと言います。

◆“松戸の弓道”を支える指導・育成サイクルの強み
貝谷錬士六段は、松戸の弓道文化が地域に深く根付いている理由として、指導者と生徒が繋がり続ける二つの強みが好循環を生んでいると言います。
貝谷錬士六段:「一つ目は、『成功の連鎖』による人の繋がりです。千葉県内で弓道部がある中学校が少ない中、松戸市内の2校が全国レベルで常に好成績を残し、この活躍を見た後輩たちが憧れて入部するというサイクルが定着しています。
二つ目は、『指導者からの継承』による質の維持です。本村昌克範士八段や奥田繁樹教士六段といった優れた指導者が中学生の基礎基本を徹底的に指導しており、私自身もその教え子です。このように充実した指導を受けた生徒たちが卒業後も連盟に入会し、弓道の担い手として地域を支える強固なサイクルこそが、“松戸の弓道”の核となっています」
◆「弓は自分の鏡」“自分の弱さ”に打ち勝つ人生観
貝谷錬士六段は、弓道で培った心技体が日々の暮らしに活かされているとし、「射即人生(弓を引くことは人生である)」を実感していると言います。弓を自分の鏡のようなものだと表現し、普段の素直な心構えが射を澄んだものにすることに繋がると考えています。また、「恭敬愛の精神(すべてを大切に思い、謙虚な姿勢で感謝すること)」や「礼儀」を重んじることの大切さを弓道から学び、弛まぬ努力をこつこつと積み上げていくことで、自分の中に後ろめたさが無くなり、自分を信じられるようになると言います。
さらに、これから弓道を始める人に向けて、他人との的中を競うことよりも自己の心身を鍛錬することが弓道の本旨であると強調します。
貝谷錬士六段:「的中以外の精神性が学べるところが弓道の魅力です。結果にとらわれず、『中てたい』『勝ちたい』という気持ちを乗り越えて、『打ち負かすのは弱い自分』であると自覚すること。そして、目標達成のためにやるべきことに一生懸命本気で向き合い、思考力・忍耐力・精神力を身につけてほしいです」
貝谷錬士六段は、弓道は体型や運動能力に関係なく間口が広い武道であり、誰でも無理なく始められ、生涯を通じて継続できると言います。だからこそ、若者が長く弓道を続けることの重要性を指導者としても強く意識しています。

◆弓から離れてしまう若い人へ 継続する魅力や楽しみを
松戸市の弓道界をけん引する貝谷錬士六段は、今後の目標とビジョンについて、冷静に、力強く語りました。
貝谷錬士六段:「“松戸の弓道”をより発展させられるか、衰退させてしまうかは、すべて後進の育成にかかっていると思っています。弓道の競技人口は学生がボリュームゾーンで、私のような比較的若い世代の成人は少なく、年齢を重ねるにつれ競技人口が増えている『砂時計』のような形をしています。
学生のころ弓道をやっていたが卒業後は弓から離れ、仕事や育児が落ち着く中年期、定年後に再開するというのが一般的な流れです。弓道をもっと盛り上げていくためには、弓から離れてしまう若い人の数を減らし弓道を続けてもらうことが大切だと考えています。
私も部活動の外部コーチですので、指導を通して弓道の魅力や面白さを伝えていき、卒業後も弓道を続けたいと思ってもらうことが重要で、それが私の使命だと思っています」

◆弓道に取り組む環境が整うのは家族のサポートがあってこそ
貝谷錬士六段の弓道に対する熱い想いを聞いた後、ご自身が弓道に取り組む環境についてお聞きすると、「実は2年前に結婚したんですが、妻には感謝の気持ちでいっぱいです」とはにかみながら心境をこぼしました。
貝谷錬士六段:「社会人になると、稽古はどうしても週末になります。家族の理解があってこそ、こうして稽古に励むことができ、成績を残せると日々実感しています」
貝谷錬士六段の弓道への情熱的な姿を見た妻の早紀さんは、「自分自身も弓道の世界に入り弓道のことを知らないと、夫をサポートできない」という思いから松戸市弓道連盟に入会し、今では夫婦で一緒に弓を引いています。国民スポーツ大会で優勝した際には、早紀さんが内緒で会場まで応援に駆けつけ、優勝直後に祝福してくれたそうです。
貝谷錬士六段:「家族が応援してくれるからこそ、中途半端な気持ちで挑めない。全力を尽くさなければと、日々自らを律しています」

そのストイックな弓道人生の合間には、早紀さんとの楽しい日常があります。夫婦でよく訪れるのは、松戸市内の小金原にあるハンバーガーショップ『R’s』や新松戸のエスニック料理店『RB’sひつじや』などだそうです。
日常の楽しみを大切にしつつも、弓の道を実直に歩み続ける貝谷錬士六段。弓道への情熱は人一倍強く、“松戸の弓道”をけん引する一人として、これからも輝き続ける存在です。

