【第108回日本選手権10000m展望~女子編~】即時内定での4連覇に挑む廣中。高島、小海、五島の追撃なるか?

公益財団法人日本陸上競技連盟のプレスリリース

フォート・キシモト、アフロスポーツ

第108回日本選手権10000mは5月3日、8月にフランス・パリで行われるオリンピック競技大会の日本代表選考会を兼ねて開催される。決戦の舞台となるのは、静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアム。自国開催となった前回の東京オリンピック代表選考レースとして行われた2021年の第105回大会以来となる開催で、このときと同じく、日中に同会場で開かれる静岡国際陸上の競技終了後、日没を待ち、徐々に気温が下がるのと風が止まる凪の時間帯を狙って、ナイターで実施される。

パリオリンピックの出場資格は、ワールドアスレティックス(WA)が設定する参加標準記録の突破者と、1カ国3名で設定されたWAワールドランキング(Road to PARIS)において、種目ごとに設定されたターゲットナンバー(出場枠)内に収まった競技者に与えられる。10000mのオリンピック参加標準記録は、男子が27分00秒00、女子は30分40秒00。前回の東京オリンピック(男子27分28秒00、女子31分25秒00)からは大きく引き上げられた。
日本では昨年、第107回日本選手権10000mの会期を12月に配置し、パリオリンピック選考競技会として実施。男女ともに好記録・好レースが展開されたものの、参加標準記録突破者はまだ出ていない。

さらに、10000mについては、クロスカントリーのワールドランキング上位8選手も標準記録突破と同様の扱いとされるため、ターゲットナンバー「27」のうち、4月22日段階で、すでに男子は24枠、女子は23枠までが埋まっている状態。WAワールドランキングで残されている出場枠は、男子は3枠、女子は4枠と、非常に“狭き門”となっている。

日本代表選手の選考は、日本陸連が定めた代表選考要項( https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202309/21_112524.pdf )に則って進められ、第108回大会では、参加標準記録の突破を条件として、最大で男子は1名、女子は2名が即時内定する可能性がある。また、内定者が出なかった場合も、日本選手権の結果(順位)が優先される選考条件であるため、ここで確実に上位の成績を収めておくことが、非常に重要となってくる。

男女両レースに当たっては、オープンで参加する実業団所属の外国人選手による好ペースが期待できるほか、昨年の第107回大会同様に電子ペーサー(ウェーブライト)も導入して、選手たちの記録への挑戦をバックアップする予定。果たして、新たな内定者は現れるか? パリオリンピック、さらには来年行われる東京世界選手権に向けて、勢いがつくような好記録・名勝負なるか? エントリーリストに基づいて、注目選手を紹介していこう。

※エントリー状況、記録・競技会等の結果は、4月22日時点の情報で構成。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

<エントリーリストはこちら>

https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1841-4.pdf
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https://www.jaaf.or.jp/jch/108/10000m/

【女子10000m】

19時30分に号砲が鳴る女子も、3連覇中の廣中璃梨佳(JP日本郵政G)をはじめとして、昨年12月に行われた前回大会の上位陣がレースをつくっていくことが見込まれる。

万全であれば、地力で頭一つ抜けている廣中が優勝候補の一番手だ。昨年のブダペスト世界選手権で7位に入賞しているため、今大会では、オリンピック参加標準記録(30分40秒00)を突破すれば、日本陸連が設定した内定条件を満たし、順位を問わずオリンピック代表に即時内定する。廣中の自己記録は、30分39秒71。これは、2022年オレゴン世界選手権の決勝(12位)でマークしたもので、日本歴代2位に位置するが、エントリー選手のなかでは、唯一、参加標準記録を上回る自己記録を持つ選手ということになる。

昨シーズンは、序盤はやや苦しんだものの、2021年東京オリンピック、2022年オレゴン世界選手権に続いて5000mと10000mの2種目に出場した8月のブダペスト世界選手権には、きっちりとピークを合わせて10000mで7位に入賞。秋の杭州アジア大会では、陸上女子のキャプテンを任され、5000m・10000mともに銀メダルを獲得し、チームジャパンを牽引した。12月に開催された前回日本選手権では、5000m過ぎでいったんレースを動かすと、ラスト1周で仕掛けて残り200mで後続を突き放すレースを展開。オリンピック参加標準記録には届かなかったものの、セカンドベストの30分55秒29でフィニッシュし、ブダペストで出したシーズンベストを大きく塗り替え、2023年アジア最高をマーク。2023年世界リストでも18位に収まった。

廣中自身は前回大会後、ラスト勝負になったのは想定外だったと明かし、中盤で先頭に立った際に、そのまま行ききれなかったことを悔しがっていたが、経験を重ねていくなかでレースパターンの幅が広がり、さまざまな状況に対応できる力がついたとも評価できる走りだった。日本選手権での連覇をスタートさせたエコパスタジアムで、今回はどんなレースを見せてくれるか。

懸念されるとしたら、前回の日本選手権以降、予定していたレースをすべて見送っていることだろう。今季に入っても出場しておらず、日本選手権が初戦となる。1カ国3名で設定されたWAワールドランキング(Road to PARIS)において、廣中は現時点で24番目だが、これは前述したクロスカントリーの上位8選手を加わっているためで、WAワールドランキングによる出場枠内では最上位にいる。廣中のランキングスコアとなっている1286ポイントは、ブダペスト世界選手権と前回日本選手権という高水準の結果で獲得したポイントの平均であることを考えると、もし、ベストの状態が整わないなかでの出場となった場合は、選考上の優先事項となる「日本選手権での順位」を確実に狙った戦略を選ぶ可能性もある。

廣中の背中を追う位置にいるのが、前回大会で31分を切って2~4位でフィニッシュした高島由香(資生堂、30分57秒26)、小海遥(第一生命グループ、30分57秒67)、五島莉乃(資生堂、30分58秒83)の3選手。このうち、WAワールドランキングにおいて小海が26番目で廣中に次いで日本人2番手、五島は小海に3ポイント差で27番目とターゲットナンバー内。高島は五島に25ポイント差で日本勢4番手に位置している。この3選手については、参加標準記録の突破を狙うよりは、「日本選手権で1つでも上位でフィニッシュすること」「少しでもランキングのポイントを上げること」が現実的なターゲットとなるだろう。

昨シーズン、急成長を印象づけたのは小海だ。仙台育英高校の出身で、2021年の春に第一生命グループに加入した選手。全国高校駅伝を制したこともある高校時代も含めて、駅伝では何度も好走を見せているが、トラックレースでは社会人3年目の昨年に、花開いた格好だ。まず、ブダペスト世界選手権代表選考レースとして行われたゴールデンゲームズinのべおか女子10000mで、廣中(4位)を抑え3位(32分01秒83)でフィニッシュ。初出場となった6月の日本選手権5000mでは自己記録を15秒以上更新する15分23秒98で、田中希実(New Balance)、加世田梨花(ダイハツ)に続いて表彰台(3位)に上がった。さらに、10000mで選出された7月のバンコク・アジア選手権では金メダルを獲得。日本一になる前にアジアチャンピオンの座を手にすることとなった。そして、12月の日本選手権10000mでは、31分台をすっ飛ばして一気に30分台へと突入し、3位入賞を果たしている。

「いつの間にか前方に上がっていて、気がついたら上位争いをしている」というレースをする選手で、まだまだ記録を伸ばしてきそう。一目置かれる立場で臨むことになる今回、オリンピック出場を懸けて挑むプレッシャーのなか、どういう走りを見せるかが注目される。

前回、自身初の30分台突入を果たしながらも4位にとどまり悔し涙を流した五島も、2022年オレゴン、2023年ブダペストと2大会連続で世界選手権出場を果たしていることでもわかるように、実力は十分で、しかも安定感の選手。すでに3月末にアメリカで5000mのレースに出場し、15分22秒33をマークしている。レース序盤から果敢に前に出て引っ張っていくレースパターンが持ち味だが、そのなかでラストの競り合いを、きっちり勝ち抜きたい。

もちろん、1988年生まれのベテランの高島も見逃せない存在だ。前回は、躍進著しい小海・五島をラスト1周でかわして、2017年にマークした自己記録(31分33秒33)を大幅に塗り替え、30分台ランナーの仲間入りを果たした。昨年は5000mでも自己記録を8年ぶりに更新(15分26秒33)。“再ブレイク”と言ってよい1年となった。2016年リオデジャネイロ以来(10000m、18位)となるオリンピック出場を実現するためには記録も順位も必須であるだけに、前回大会を再現するような走りが見たい。

今回、女子のエントリーはオープン参加を除いて14名にとどまり、“定員割れ”となった。ターゲットナンバー(30)で出場者が切られた男子に比べると、やや寂しく感じるのは否めないが、来年は東京世界選手権、再来年には名古屋アジア大会と、日本での主要国際大会開催が続いていくこのタイミングで、キラリと光る走りをする選手が現れることにも期待したい。

矢田みくに(エディオン)は、前回は8位だったが、5000mの室内アジア記録保持者(15分23秒87、2022年)で10000mでも31分34秒39(2020年)の自己記録を持つ選手。昨年のアジア選手権10000m銀メダリストで、世界クロカンには2年連続で代表に選ばれている川口桃佳(ユニクロ)は、2022年に出している自己記録(31分57秒81)を少しでも引き上げたいところだろう。昨年の世界ロードランニング選手権代表(5km14位)の渡邊菜々美(パナソニック)あたりは6月に行われる5000mも見据えながらのレースになるかもしれない。このほか、前回大会で6・7位に食い込んだ下田平渚(センコー、31分48秒54)と菅田雅香(JP日本郵政G、31分49秒20)は、ともに昨年10000mに挑戦してきたなかでの成績だった。主戦場が10000mになっていく可能性もありそうだ。

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【第108回日本選手権・10000m特設サイト】

https://www.jaaf.or.jp/jch/108/10000m/

【第107回日本選手権・10000mアーカイブ】

【大会概要】

■大会名:第108回日本陸上競技選手権大会・10000m
■開催日程:5月3日(金・祝)
■開催会場:静岡・エコパスタジアム
■実施種目:19:30 女子10000m、20:10 男子10000m
■申込記録
男子:28分16秒00 女子:32分30秒00(5000m:15分40秒00)
■申込記録有効期間
2023年1月1日から2024年4月14日まで
■ターゲットナンバー
男子:30名 女子:30名
詳細はこちら(大会要項:https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1841-1.pdf

【パリ五輪 参加標準記録】

■参加標準記録
男子:27分00秒00 女子:30分40秒00
■参加標準記録有効期間
2022年12月31日から2024年6月30日まで

【パリ五輪 日本代表内定について】

※パリ2024オリンピック競技大会 トラック&フィールド種目日本代表選手選考要項(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202309/21_112524.pdf)より抜粋

1)ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会で3位以内の成績を収めた日本人最上位の競技者で、参加資格有効期間内に、ワールドランキング対象競技会において参加標準記録を満たした競技者。
2)1)に該当者がいない種目において、ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会で8位以内の成績を収めた日本人最上位の競技者(廣中璃梨佳)で、2023年11月1日から2024年6月30日までに、ワールドランキング対象競技会において参加標準記録を満たした競技者。
3)第107回日本選手権・10000m優勝者で、第107回日本選手権・10000m終了時点までに参加標準記録を満たした競技者。
4)第108回日本選手権の優勝者であって、参加資格有効期間内に参加標準記録を満たした競技者。

パリ2024オリンピック日本代表選手選考ガイド

https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202404/19_105815.pdf

【パリ五輪 参加有資格者一覧】

https://www.jaaf.or.jp/news/div/18659/

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