ウェルビーイングはスポーツ観戦によって醸成される

早稲田大学のプレスリリース

ウェルビーイングはスポーツ観戦によって醸成される 社会科学的アプローチと神経生理学的アプローチの融合研究 ―

 
詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。
 

【 発表のポイント 】 ◆ スポーツ庁がスポーツへの関心や実施状況の把握を目的として、2万人の日本人を対象に行った大規模調査のデータを分析し、性別、年齢、収入を統制したところ「スタジアムやアリーナでの観戦ならびにテレビ・インターネットでの観戦は、どちらも生活充実感と有意な正の関連がある」ことが示された。また、人気スポーツと相対的に人気が劣るスポーツの場合には、人気スポーツを観戦すると、よりスポーツ観戦によるウェルビーイングの醸成効果は強くなることが判明した。 ◆ 3テスラ磁気共鳴機能画像(MR)装置を用いて、スポーツを観ている際の脳活動およびスポーツ観戦頻度と脳構造の関係性を調べた結果、「スポーツを観ることで報酬系が活性化し、一時的にウェルビーイングが促進される」だけでなく、「それを繰り返すことで報酬系の構造変化が起こり、長期的なウェルビーイングにも貢献している」という神経生理学的メカニズムが示唆された。 ◆ スポーツとウェルビーイングの相性の良さを科学的エビデンスとして提示できたことで、人々がスポーツを通してより充実した人生を送り、幸福に満ちたより良い社会の実現が期待できる結果となった。今後スポーツ振興政策の立案にも影響を与えることが示唆される。

早稲田大学スポーツ科学学術院の佐藤 晋太郎(さとう しんたろう)准教授、同大人間科学学術院の中川 剣人(なかがわ けんと)次席研究員およびシンガポール・ナンヤン工科大学の木下 敬太(きのした けいた)アシスタントプロフェッサーは、「スポーツ観戦によってウェルビーイングは醸成されるのか」を、さまざまな指標を活用して検証し、スポーツ観戦がウェルビーイングを高めるという強固な科学的エビデンスを示すことに成功しました。社会科学的なアンケート指標を用いてウェルビーイングを測定すると、スポーツ観戦と有意な正の関連を示しました。また、この現象のメカニズムとして神経生理学的指標を測定したところ、スポーツ観戦に伴ってウェルビーイングを担うと考えられる脳領域の機能・構造が変化する可能性を示しました。

 
本研究成果は、『Sport Management Review』(論文名:Watching Sport Enhances Well-Being: Evidence from a Multi-Method Approach)にて、2024年3月22日(金)に掲載されました。
 
■研究の波及効果や社会的影響
この研究は、スポーツ観戦が一般の人々のウェルビーイングを高める可能性を示唆しています。このことから、スポーツ観戦を健康増進や生活の質の向上につながる活動として推奨することができるかもしれません。本研究により、スポーツ観戦の効果が科学的に裏付けられたことで、スポーツ振興政策の立案にも影響を与える可能性があり、スポーツ観戦環境の整備に注力することで、国民のウェルビーイングの向上につなげることができると考えられます。また、近年問題が深刻化している、メンタルヘルスに関する問題の対策の一環として、スポーツ観戦を活用することも考えられます。例えば、ストレス解消の手段としてスポーツ観戦を推奨することができるかもしれません。実際、諸外国ではメンタルヘルスの改善策として、アートやスポーツを「処方する」取り組みも活発化しています。スポーツ観戦の価値が再認識されることで、スポーツ産業にも影響を与える可能性があります。例えば、観戦体験の質の向上や、観戦者のニーズに合ったサービスの提供などに注力することで、スポーツ産業の発展につなげることができるかもしれません。最後に、この研究は、社会科学と神経科学の手法を組み合わせることで、スポーツ観戦の効果を多面的に明らかにしました。このことは、学際的な研究の重要性を示しており、今後のスポーツ科学研究の発展に寄与する可能性があると考えられます。
 
■今後の課題・展望
この研究では、スポーツ観戦のウェルビーイングへの影響を検討しましたが、今後は、スポーツ観戦後や観戦時における特定の感情の高まりによる消費者行動などにも注目していければ、スポーツ観戦が人々の行動にどのように影響しているかを探求できると考えられます。さらに、テクノロジーを用いた観戦行動がどのようにスポーツ観戦によるウェルビーイングへの影響に変化を与えるかといった点にも注目してみたいと考えています。
 
■論文情報
雑誌名:Sport Management Review
論文名:Watching Sport Enhances Well-Being: Evidence from a Multi-Method Approach
執筆者名(所属機関名):木下 敬太(ナンヤン工科大学)、中川 剣人(早稲田大学)、
佐藤 晋太郎*(早稲田大学)*責任著者
掲載日時:2024年3月22日(金)
掲載URL:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14413523.2024.2329831
DOI:doi.org/10.1080/14413523.2024.2329831

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。