【インタビュー企画/Fスポンサーズ】アビームコンサルティング株式会社様

一般社団法人日本フットサルトップリーグのプレスリリース

Fリーグのスポンサー企業を訪問し、担当者に話を伺うインタビュー企画「Fスポンサーズ」。今回は、ABeam Consulting(アビームコンサルティング株式会社/以下、アビームコンサルティング)を訪ね、執行役員・プリンシパルの久保田圭一さんに話を聞きました。
アビームコンサルティングは、Fリーグのあらゆる施策やチャレンジを一緒になって考え、生み出し、より多くの人に見てもらえる、知ってもらえるスポーツにするためのサポートを続けています。
また、久保田さんは一般社団法人日本フットサルトップリーグの副理事長の顔も持っており、Fリーグを運営する組織の重要人物として、大きな役割を担っています。
今回は「アビームコンサルティング」、「Fリーグ」その両方の側面から久保田さんにお話をお伺いして、Fリーグが実施する施策への思いや成り立ちを知ってもらう機会にできたらと思います。

■Fリーグの課題解決策を共に探る

──アビームコンサルティングは、もともとは名古屋オーシャンズのスポンサーとして契約されていたということですが、どのようにFリーグとの関わりが始まったのでしょうか?

関連会社である『アビームシステムズ株式会社』が名古屋オーシャンズのスポンサーであったことが最初のつながりです。そこからアビームシステムズ当時の社長から「Fリーグのスポンサーをしたらどうか?」という話をもらい、Fリーグを支援することになりました。

──久保田さんがスポーツ支援を指揮する立場だったのですか?

そうです。私がアビームコンサルティングで2017年に立ち上げたスポーツ&エンターテインメントという事業部を統括しており、スポンサーの話も私のもとにいただいたという流れです。2018年のことだったと思いますが、双方にメリットがあるなと感じて契約しました。

──どういった点で双方にメリットがあると?

マイナースポーツではありつつも、私たち自身もスポーツビジネスを立ち上げ、スポーツ協会の課題などを指摘しておりましたが、圧倒的に現場を知らなかった。なによりも現場を把握することが大事だと思っていたなかで、Fリーグと契約するのであれば現場に入って、課題を把握し、その解決を一緒に取り組ませてほしいと伝えました。

──最初はどのようなスタートだったのでしょうか?

私がFリーグCOO代行として携わらせていただくことになったのが2020年ですが、それ以前の1年半くらいは弊社のメンバーに大部分を任せていました。いろいろと分析をするなかで、まずはクラブの支援を先に手掛けていました。関東の2クラブと一緒にマーケティングのサポートをする形で、弊社の若手をアサインして、SNSの盛り上げなどにトライしました。その過程で、リーグ全体の分析をしていくという流れです。

──最初はクラブから始めたのですね。

そうです。まずはクラブの状況を把握したかったので。

──そこから、リーグ組織の中枢へグッと踏み込んでいきますよね。

スポーツ庁が推奨する「スポーツ団体ガバナンスコード」が策定され、日本フットサルトップリーグとしてしっかり対応しないといけないということで、その支援から組織全体に入っていくようになりました。そこで、現状のガバナンスコードを調査すると、いろいろと課題が出てきたことで、私自身もきちんと関わろうという流れです。

──トップリーグの運営は簡単ではないと思います。ガバナンスコードの整備も含め、大変なことも多いのではないかと思いますが……。

これはスポーツ界全体に言えることですが、習慣になっていることが多いです。効率的かどうかの判断をしておらず、比較材料もなく、最適かどうかがわからない。Fリーグも同様ですし、これは多くのスポーツ団体の実態でもあります。そこに、いろんな会社の実態を把握している私たちがコンサルティング担当として関わることで、「ここはこんなことしなくても良いのではないか?」とか「こうすることで効率化していけるのではないか」と伝えることには意味があると思っています。ただし、課題が見えてきたとしても、それを解決するためのアクションは負荷も労力もすごくかかりますので、簡単なことではありません。

──多忙ななかで、さらに仕事が増えるわけですよね。

Fリーグの事務局員も日々大変ななかで作業しており、そこで課題を解決するために追加で検討して実施することが、リソース的に難しい。では、そのリソースをどう増やすかというと、それこそお金がないと困るのでスポンサーを集める必要がある。でも、スポンサー営業を増やすリソースもない……となっていくことが難しいところですね。これはマイナースポーツのリーグ運営において、非常に難しいところだと思います。

──組織の抱える課題を解決するために、リソースがない、お金がない、という際に、どのように対処されていくものなのでしょうか?

絶対的な正解があればぜひ教えてほしいですね(笑)。一番はスポンサーを探すことなので、それをどれだけリーグ関係者全員で取り組めるかだと思っています。もっと意思統一を図って、トライしていく必要がある部分です。一人ではできないですからね。

■共創型のパートナーシップという形

──リーグにもクラブにも同じような課題感がありますか?

「人」というリソースに関しては同じ課題感があると思います。クラブも現状はスポンサー収入に頼る部分が大きいので、その課題は変わりません。あとはどう連携を進めるかが一つのポイントだと思います。各地域・都道府県フットサル連盟や学校、大学などを含め、地域のリソースを活用する余地はあるように感じています。例えば、大学と連携して、学生をインターンとして活用する事例は、双方に利益があります。学生にとってもスポーツビジネスを現場で学べる機会になるので、マイナースポーツのやり方の一つですよね。

──企業と連携する例では去年、イノベーションリーグで湘南ベルマーレとスポンサー企業の一燈会が「ベルファーム」で大賞を受賞されました。お金を支援する形ではなく、共創することで価値を生み出しています。ペスカドーラ町田も今、エプソンと双方のリソースを活用してホームゲームを中心に新しい取り組みをしていますし、新しい関係性が見られますよね。

まさに、湘南ベレマーレとペスカドーラ町田がうまくいっている例だと思います。そうした活動はモデルケースとなりそうです。両クラブとも、社長がすごく活動的なので、それによって企業との共創型の連携が進むようなコミュニケーションを取れているのだと思います。

──Fリーグとアビームコンサルティングの関係も共創ではないでしょうか。

そうだと思います。私たちも単にお金を出しているだけではなく、そのお金をリーグの発展に活用しようという、共創型のパートナーシップだと思います。私たちのスポンサーフィーはFリーグのあらゆる施策に活用してほしいという相談をしています。

──コロナ禍以前と以後ではあらゆる難しさもあったのではないでしょうか。

他のスポーツも同じですから、それほど気にはしていません。コロナ禍で興行ができない、無観客だからどうこうという議論は社内でもあまりなく、引き続きサポートして、落ち着いたところから施策を増やしていこうという考え方でやってきました。

■ #ThanksRespect の始まりと現在地

──久保田さんは「#ThanksRespect」の発起人です。この企画のきっかけは?

スポーツに関わっていく中で、選手会やスポンサー懇親会などに足を運ぶ機会があるのですが、選手が全く、スポンサー企業のことを知らない現状があります。それはFリーグに限った話ではなく「どちらの会社ですか?」「なにをやっている会社ですか?」という会話が多かった。それはおかしくないかなと思ったのがきっかけですね。

──支援してくれている方の実態をわかっていなかった。

そうです。どのスポーツでもおおむね、スポンサー収益は5割くらいとされています。ほぼ半分の収益がスポンサーフィーであり、それによってプレーの環境などが整備されているにもかかわらず、選手はいつもチームメートや親、地域への感謝を口にしています。そこにスポンサー企業はあまり出てこない。やはり、スポンサー企業にも敬意の気持ちをもって接してほしいなと。海外では、選手が企業のことを知っていたり、懇親会ではビジネスマンとして話せたりする選手もかなり多いので、そうあるべきじゃないかなと。

──たしかに、そう聞くと当たり前のことのように感じます。

支援している企業も間違いなくうれしいですよね。弊社でも、Fリーグの選手から「アビームコンサルティングさんありがとう」と言ってもらえたら、社員も喜びます。SNSで弊社への感謝の言葉が綴られていたら、仮にFリーグのことを知らなくてもうれしいはずです。感謝されたいからやるわけではないですけど、双方にとっていい関係性が生まれますし、企業がスポンサーをする意味にもなると思い、活動を始めました。

──最初はどのように始めたのですか?今ではかなり定着しています。

私がnoteに書いて、その記事をX(旧Twitter)に投稿したのが始まりです。これは驚きでもありますけど、だいぶこの活動が広まってきた感触はあります。

──ファン・サポーターのリアクションも大きかったですね。

そうですね。むしろ、ファン・サポーターのほうが反応してくれています(笑)。選手はまだそこまでかもしれませんが、実際、かなりやってくれる選手もいますが……。

──今回のインタビューのきっかけも実は「#ThanksRespect」があったからです。Fリーグを支援している企業のことを、もっと多くの人に知ってもらいたい、と。

それはありがたいですね。まだまだファン・サポーターを含めて大きな業界ではないですが、スポンサー企業からも企画に対して感謝してもらえるケースも増えてきたので、こうした活動を通して、新たな企業やスポンサー継続へとつながるとうれしいです。

──「#ThanksRespect」のワードも久保田さんの立案ですよね?

そうですね。語呂がちょうど良かったので。今ではみなさん使っていただいてますが、最初は自分でかなり投稿しました。Fリーグ所属全クラブの飲食店の紹介とか、大変でしたよ(苦笑)。全部自分で、各クラブのホームページを一つずつ見て、なにを売っているのかを調べて、noteに貼っていきました。とてつもなく時間がかかっていますよ。でも、そうでもしないと、どのスポンサーがなにをやっているのかわからないと思ったので。

──そうした活動が派生して『ABeam AWARD』が生まれたのでしょうか?

まさにそうです。「#ThanksRespect」を活用して、もっとファン・サポーターを巻き込んでいきたいと思いました。それに、競技では名古屋オーシャンズの一強という構図があるなかでも、それ以外の部分を評価する仕組みをつくりたいな、と。これをパッケージにしたら、他のリーグでも活用できるのではないかと思い、始めてみることにしました。

──リーグ全体で足並みをそろえる企画は簡単ではないと感じますが、新しい目的が生まれ、各クラブ、選手、ファン・サポーターの多くが参加しているように感じます。

今シーズンで3年目になりますが、取り組んでくれるクラブは増えました。とはいえ、まだまだやりきれていない部分も、正直あります。先ほどの話にもあったリソースの問題もそうですし、大号令をかけられるリーグのガバナンスも改善の余地があると思います。

──そのあたりの課題感も、今まさに共有しながら進んでいる、と。

アビームコンサルティングの立場としては、今はとことんやっていこうと思っています。積極的に参加してくれるクラブもありますから、そうした人たちを巻き込んで、結果を出していけたらいいなと。続けていくことで、変化していく部分は間違いなくありますから。

■FリーグにSNSが絶対に必要なワケ

──久保田さんには、アビームコンサルティングと、Fリーグの副理事長という両方の立場があります。Fリーグの中の話にはなりますが、どういったフローで物事が決まっていくのでしょうか。

例えば競技に関わる部分、大会方針やレギュレーションは各クラブの代表者などが参加する実行委員会を通して決まっていきます。それ以外の施策や取り組みについては、一般社団法人日本フットサルトップリーグの理事会で決めていくことになります。

──では、『ABeam AWARD』は理事会で決まるということですか?

そこは、広報委員会で決定しています。『ABeam AWARD』で言えば、アビームコンサルティングからFリーグに提案して、広報委員会でプレゼンして、やってみようということになれば、それを実行委員会で報告しています。もちろん僕は両方の立場からの参加ですが(笑)。

──その広報委員会というのは?

以前はなかった委員会ですが、これまで、各クラブ広報担当同士でなにかを話し合って決めたいという時でも、実行委員会で確認する必要がありました。ただ、Fリーグの中でもその仕組みだとスピード感や忌憚のない意見を出す障壁になってしまう嫌いもあったので、2022年4月にFリーグが新法人として独立する際に広報委員会が組織されました。もちろん、常に実行委員会と連携を図りながらですが、報告ベースで進められることが増えました。

──久保田さんは実行委員会と理事会の両方に関わる立場ではありますが、アビームコンサルティングさんとしては基本的に競技以外のところで関わっている、ということですよね?

そのとおりです。競技について弊社が意見をすることはありません。

──では、もう一度『ABeam AWARD』について伺いたいのですが、3年間続けてきて、参加方法を含め進化してきました。周囲のリアクションはいかがですか?

初年度はシンプルで、参加しやすかったと思いますが、一方で2年目は難易度が高かったかもしれません。設計の問題なので今年はシンプルに戻したのですが、今度はなんの写真を撮ったらいいかわからないという声もありました。そういう声は私のX(旧Twitter)に直接届くので、改善しています。「F友写真」の投稿は本人が映らなくても大丈夫なように緩和しましたし、今もまだ試行錯誤しながら進めている感じです。

──「F友写真」は、新規のお客さんを増やすための施策ですからね。

その通りです。

──Fリーグ全体の大きな企画ではあるものの、先頭に立って施策を進めている作り手の久保田さんの顔が見えることで、安心感や信頼感につながっているように思います。

顔が見えることはすごく大切にしています。絶対に盛り上がると思っていますから、私自身、X(旧Twitter)でのコミュニケーションを取るようにしています。

──ファン・サポーターの間で、久保田さんがかなり認知されていますよね。

実際のところ「#ThanksRespect」を始めた際に、ファン・サポーターとのつながりができました。それで、意見を収集しやすくなりましたね。昨年の「#Fの推しメン」企画などは、そうした声をそのまま形にした感じです。

──ただ、ネガティブな声が直接届いてしまうことも……?

いえ、批判的な人はほとんどいません。私自身、ファン・サポーターの立場を考えながら投稿するように心がけているので、建設的な意見などが多いのかなと思います。

──そうした久保田さんの活動自体が、Fリーグに限らない、スポーツ業界にとって示唆に富んだ取り組みだと感じます。リソースがない、お金がないことの解決策の一つとして、SNSをうまく活用していくことは、業界全体の活路ではないでしょうか。

そう思います。お金がないなかで当然、SNSの活用は大きな拡散手段となりますから。あとは種類ですね。Xだけなのか、Instagramなのか、TikTokなのか。それら全てなのか。いずれにしてもSNSを使うべきですし、できるだけインタラクティブにやることが絶対にいいかなと。既存のファン・サポーターの方たちとうまく付き合い、巻き込みながら、新しいお客さんを生み出すために、最適な方法を探っていけたらと思います。

〈取材の詳細〉
●日時:2023年8月31日
●場所:アビームコンサルティング株式会社(東京都)
●聞き手:本田好伸、青木ひかる、大西浩太郎(SAL)
●撮影:大西浩太郎(SAL)

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