「WHOガイドライン」達成率から見える、日本人の身体活動の実態/国民の約半数が身体活動不足

公益財団法人 笹川スポーツ財団のプレスリリース

「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する公益財団法人笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利 以下:SSF)は、1992年から隔年で全国の18歳以上を調査対象に、運動・スポーツ実施状況やスポーツ観戦率、スポーツボランティア実施率、好きなスポーツ選手の推移など、国内のスポーツライフの現状を明らかにし、報告書「スポーツライフ・データ」としてまとめています。
2020年度調査では、世界保健機関 (WHO) が開発した、人々の日常生活の身体活動(からだを動かすことの総称)量を把握するための質問票「世界標準化身体活動質問票(GPAQ)」の質問項目を追加いたしました。健康づくりに欠かせない身体活動を増やす政策や施策を推進するには、余暇に行う運動・スポーツを含むさまざまな生活場面で、人々はいつ・どれぐらい体を動かしているのかを把握する必要があるためです。
本調査結果では、日本人の総身体活動量におけるWHO身体活動ガイドライン推奨基準の達成率が、全体で53.3%、男性は59.6%、女性は46.9%であり、特に30歳代女性では37.9%にまで落ち込んでいることがわかりました。

 

 

  • 調査結果のポイント

■日本人の「総身体活動量」WHO身体活動ガイドライン推奨基準 達成率:全体53.3%、男性59.6%、女性46.9%

■30歳代女性は「余暇」の身体活動が少なく、WHO推奨基準の達成率が37.9%である

■日本人の座位時間は約5時間半/日、20歳代男女や50歳代男性では平均6時間/日以上

 

  • 調査委員コメント

スポーツライフ調査におけるGPAQの結果を身体活動ガイドラインの達成率と座位時間から確認した。今後、身体活動・スポーツ普及施策に必要な観点をいくつか挙げると、まずは子育て世代女性におけるガイドライン達成率の低さが際立っており、リフレッシュ効果の大きい「余暇」身体活動の時間が取れていない実態が改めて示された。子育て支援施策が複合的に進められた上で、ソーシャル・マーケティング等に基づき丁寧に対象となる人々への理解を深めて、当事者目線で身体活動の普及戦略が進められることが鍵となるのではないか。

また、全世代に共通することとして、新型コロナウイルス感染症の流行下で在宅勤務の広がりや対面での交流機会が減少する中、身体活動・スポーツの普及には、前例がないような取り組みも模索していくことが求められている。ここは一度、基本に立ち返り、相手(支援・普及対象者)を知り、ともに考え、作り上げていくプロセスを大事にしたい。

【東京大学大学院 医学系研究科講師/SSFスポーツライフ調査委員 鎌田 真光】

 

  • 「GPAQ:Global Physical Activity Questionnaire (世界標準化身体活動質問票)」とは?

GPAQ
世界保健機関(WHO:World Health Organization: WHO)が開発した質問票。

目的
余暇に行う運動・スポーツを含む、生活全体における人々の身体活動量を把握する。

項目
3領域 (仕事、移動、余暇) と座位から構成され、さらに3領域の身体活動は中強度と高強度に分かれる。

身体活動量の測り方
週あたりの身体活動時間に強度を掛けて算出。強度はメッツという単位で示され、安静状態には1メッツ、中強度の身体活動には4メッツ、高強度の身体活動には8メッツが割り当てられる。
例えば、仕事で週に5時間激しく動く人の身体活動量は「5×8メッツ=40メッツ・時/週」となる。

 

  • 調査結果

■WHO身体活動ガイドライン推奨基準の達成率

WHOの身体活動ガイドラインでは、18歳以上の成人に対して、「中強度の身体活動を週に150分、または高強度の身体活動を週に75分、またはこれらと同等の組み合わせ(GPAQにおける週600メッツ・分に相当)」を行うことを推奨している。日本人のどのくらいがこの基準を達成しているのか、図表1はこのWHOの身体活動量基準の達成率を、全体、性・年代別に示した結果である。

全体では53.3%、男性59.6%、女性46.9%の達成率であった。男性では高齢になるほど達成率が低くなり、18~64歳では61.2%の達成率が、65歳以上では54.6%となっていた。一方、女性では子育て世代での低い達成率が顕著であり、30歳代では37.9%にまで落ち込んでいる。

図表1:WHO推奨基準の達成率:全体、性・年代別

 

資料:笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査」2020

 

■日本人の身体活動量
全体の総身体活動量の平均は 34.8メッツ・時/週であり、仕事21.8メッツ・時/週、移動6.4メッツ・時/週、余暇6.5メッツ・時/週である。目的別に身体活動の分布を細かく見てみると、男性では高齢になるほど「仕事」での身体活動が減っていることや、30歳代女性の余暇3.1メッツ・時/週は最も低く、「余暇」目的の身体活動が少ないことが分かり、これらがWHO基準達成率にも影響していることが読み取れる。

※本件では、「仕事」には家事や介護、学業等、「移動」は通勤・通学・買い物のための移動等、「余暇」にはスポーツや運動等を含む。

図表2:全体および仕事・移動・余暇の身体活動量(全体,性・年代別)

 

資料:笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査」2020

■座位時間の実態

身体活動と関連が深く、健康に影響を与える生活習慣として、座ったり寝転んだりする座位行動(Sedentary behavior)がある。1日の座位時間が長いと総死亡のリスクが高いことも分かっており、身体活動の促進に加えて座位時間の抑制も重要である。

図表3は、普段の1日における座ったり横になったりして過ごす時間(座位時間)の平均値を性・年代別に示している。なお、座位時間に睡眠は含まれない。全体では1日あたりの平均座位時間は5.5時間であった。男性は5.7時間、女性5.3時間とやや男性が長い。20歳代男女や50歳代男性では平均6時間以上であった。これまでに世界62カ国で調査された座位時間の中央値(四分位値)は4.7時間(3.5-5.1)、高所得国に限定しても4.9時間(4.7–5.3)と報告されている。今回の調査で、日本人の座位時間の長さが世界でもトップクラスであることが改めて示された。立位でデスクワークの出来るスタンディングデスクの活用のほか、労働時間の適正化をはじめとした働き方改革、ゲームやテレビなど座って行う娯楽時間の対策といった多面的な施策が必要となる。

図表3:普段の1日における座ったり横になったりして過ごす時間(性別・性×年代別)

▼本リリースの全文はこちら
https://www.ssf.or.jp/thinktank/sports_life/gpaq/02.html

 

  • 「Sport for Everyone社会の実現」 笹川スポーツ財団

代表者 : 理事長 渡邉 一利
所在地 : 〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
設立 : 1991年3月
目的 : スポーツ・フォー・エブリワンの推進
事業内容:
・生涯スポーツ振興のための研究調査
・生涯スポーツ振興機関との連携事業
・生涯スポーツ振興のための広報活動
URL : https://www.ssf.or.jp/

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